如来教

如来教について

如来教（にょらいきょう）は、江戸時代の享和2年（1802年）に尾張国愛知郡熱田で、農夫の長四郎の三女である一尊如来きの（きの女）によって創始された宗教です。きのは、農夫でありながら神懸かりの経験を通じて宗教的な啓示を受け、信者たちに教えを広めました。彼女の生涯（1756年 - 1826年）にわたり、この教えは多くの人々に影響を与えました。

教義と信仰の特徴

石橋智信により、「一尊教」とも呼ばれる如来教は、その特異な教義に特徴的です。特に日本の宗教の中では珍しく「原罪」の概念を持ち、信者はこの考え方を基に自己の内面的な救いを求めます。また、船乗りたちの間で信仰される「金毘羅」が如来の使いとされ、そこから信仰の中心が形成されています。これらの信仰は、全能の如来に対する信頼に基づいています。

教祖であるきのは、霊的な啓示のみならず、如来の存在やその全能性についても語り、その内容は名古屋弁で書かれた「御経様」と呼ばれる経典に記録されています。経典は、きのの説法を速記したもので、266巻にも及び特異な形式を持っています。この経典は信者にとって精神的な支えであり、愛の神としての如来の教えを広める役割を果たします。

歴史の歩み

如来教はその創設当初、尾張藩士らによって支持され、信者が増加しました。しかし、文政3年（1820年）、教祖きのは尾張藩の取調べを受けることになります。教義は神観念において、如来を全ての神々と仏の上に置き、自己の神として位置付けました。彼女は、神は人を救う力を持っており、その救いは愛の神によって実現すると教えました。

特に印象的なのは、きのが自らの死を迎える際の言葉です。「みんなの苦しみをおれ一人して引請るのでや」と言い残し、信者たちの苦しみを共有する姿勢を示しました。彼女は文政9年（1826年）に亡くなり、その後は武蔵国川越から来た菊という女性がその後を継いで、教義を広め続けました。

しかし、明治時代に入ると、尾張藩による布教差し止めが行われ、当時の信仰運動は困難な状況に置かれました。安政5年（1858年）には「お水」を治病行為に用いることで、キリシタンとの結びつきが疑われ、布教の場が奪われてしまいます。明治6年（1873年）には廃寺届けを出し、その後も困難な時期が続きました。

復興と現在

明治9年（1876年）、曹洞宗の僧侶である小寺大拙の入信を機に、如来教は再興されます。彼は禅宗の儀式を取り入れ、教団を発展させることに貢献しました。1884年には新たに名称を改め、「曹洞宗法持寺説教所鉄地蔵堂」と名付けられ、段階的に発展を遂げました。

1929年（昭和4年）には「一尊教団」が分離し、現在では宗教法人として現存しています。さらに、1962年には「宗教法人如来教」として改称され、今もなお活動を続けています。

現在と文化財

現代の如来教の本部は愛知県名古屋市熱田区に位置し、登和山青大悲寺がその拠点となっています。また、重要な文化財として鋳鉄地蔵菩薩立像があり、愛知県の指定文化財として保護されています。信者たちは独自の教義に基づいてコミュニティを形成し、精神的な支えを求める人々に寄り添いながら、信仰の継承に努めています。

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