姉崎藩

姉崎藩について

姉崎藩（あねさきはん/あねがさきはん）は、江戸時代初期に上総国市原郡姉崎村（現在の千葉県市原市姉崎）に存在した藩です。藩主は徳川家康の次男である結城秀康の子、松平忠昌（福井松平家の祖）と松平直政（雲州松平家の祖）が相次いで務めましたが、いずれも短期間で移封となり、廃藩となりました。

歴史

前史

姉崎は、水陸交通の要衝として古くから重要視されていました。戦国時代には、椎津城を巡り度々争奪戦が繰り広げられましたが、1590年に後北条氏が滅亡すると共に、椎津城は廃城となりました。

松平忠昌による支配

1607年（慶長12年）11月、徳川家康の次男である結城秀康の次男・松平忠昌（当時11歳）が姉崎に1万石を与えられ、姉崎藩が立藩しました。忠昌の家臣による陣屋支配が行われていたと考えられますが、近隣の八幡を領していた本多佐渡守に、忠昌の采地の「介抱」が命じられたという記録もあります。ただし、本多家が姉崎藩とどのように関わっていたのかは、はっきりとはわかっていません。

1615年（元和元年）11月、忠昌は常陸国下妻藩へ移封され、姉崎藩は廃藩となりました。その後、忠昌は信濃川中島藩を経て越後高田藩に移り、最終的には越前福井藩主となりました。

松平直政による支配

松平直政は忠昌の弟（結城秀康の三男）であり、1616年（元和2年）には兄の北荘藩主松平忠直から越前木本に1万石を与えられていました。1619年（元和5年）12月、幕府から上総国姉崎で1万石を与えられ、姉崎藩が再立藩しました。この時、従来の1万石に新たに1万石が加増され合計2万石となったのか、あるいは石高は同じ1万石で独立の大名とされたのかは、資料が少なく明確ではありません。

1624年（寛永元年）4月、松平忠直が改易となった後の北ノ庄藩（福井藩）を、越後高田藩主であった松平忠昌が継承しました。大野郡は3人の弟に分知されることとなり、1624年（寛永元年）6月、直政は姉崎から転出し、大野藩に5万石で入封しました。その後、直政は信濃松本藩を経て出雲松江藩に移りました。

歴代藩主

福井松平家
親藩。1万石。
松平忠昌（ただまさ）
雲州松平家
親藩。2万石。
松平直政（なおまさ）

領地

陣屋と陣屋町

姉崎藩の陣屋（姉崎陣屋）の正確な場所は不明ですが、『房総における近世陣屋』という資料では、妙経寺の西側200mほどの場所が候補地として挙げられています。この場所は、旧道がかつて直角に曲がっていたことや、明治初期の地図で方形の区画が認められることなどが根拠となっています。

なお、この場所から境川（椎津川）を挟んだ南側には、江戸時代後期に成立した鶴牧藩（水野家1万5000石）が、藩庁として鶴牧陣屋（現在の市原市立姉崎小学校敷地）を建設しています。

姉崎は、江戸時代には五井や八幡とともに房総往還の継立場として栄えた町でした。姉崎の町場がどのように形成されたかについては諸説あり、姉崎に陣屋が置かれたことが町場の始まりとする見方もあれば、近世的な町場の形成は戦国時代末期にまで遡るとする見解もあります。現在の妙経寺は、継立場の入口に位置しており、妙経寺と町場は一体的な計画に基づいて整備されたと考えられています。妙経寺境内では「姉崎妙経寺遺跡」として発掘調査が行われていますが、出土品は江戸時代のものが中心で、戦国時代末期の陶器が若干出土するのみであることから、寺の移転時期（＝町場の整備時期）を特定する決定的な材料にはなっていません。

参考文献

『千葉県教育振興財団研究紀要 第28号 房総における近世陣屋』千葉県教育振興財団、2013年。
http://www.echiba.org/pdf/kiyo/kiyo_028.pdf

関連項目

* 鶴牧藩 - 江戸時代後期に同一地域に成立した藩

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