姜英勲

姜英勲（カン・ヨンフン）：激動の時代を生き抜いた軍人・政治家

姜英勲（カン・ヨンフン、1922年5月30日 - 2016年5月10日）は、大韓民国の政治家、そして陸軍軍人として、激動の20世紀を生きました。最終階級は中将で、カトリック教徒でもありました。彼の生涯は、朝鮮半島の近代史を象徴するかのようです。

生い立ちと学業

1922年、平安北道昌城郡で生まれた姜英勲は、6人兄弟の一人でした。書堂で学び始めた後、普通学校4年に編入。15歳で寧辺農業学校に入学しました。農業学校での実習の多さに不満を持ち校長に抗議したというエピソードは、彼の正義感の強さを表しています。当初は、平壌師範学校の受験にも挑戦しましたが、こちらは不合格となっています。その後、日本の広島県に留学していた友人からの誘いを受け、1938年に渡日。高田中学校に編入し、当初は授業内容の違いに苦労しましたが、努力の結果、最初の期末試験で首席となりました。進学先を悩んでいた時、建国大学の入学要綱で教師陣に崔南善がいることを知り、同大学への進学を決意します。1941年、建国大学に入学。7人の朝鮮人学生が選抜され、その中に姜もいました。

軍人としての経歴

1944年1月、姜は学徒兵として関東軍独立歩兵第138部隊に入隊します。これは、当時の戦況と「独立のためには、軍事知識と武力をきちんと導くことができる将校養成が重要である」という崔南善の言葉に影響を受けたものでした。1945年7月には、本土決戦のために秋田県に配備され、終戦を迎えました。終戦直後には少尉に任官し、朝鮮人兵士を率いて帰国することになります。その後、1946年に越南し、軍人としての道を歩み始めました。軍事英語学校を卒業後、少尉に任官。その後、第8連隊第2大隊長、国防部長官秘書室長、第12連隊長などを歴任しました。朝鮮戦争勃発時には、第2軍団参謀長として戦い、その後も第3軍団副軍団長、陸軍本部軍需局長などを歴任。1952年には駐アメリカ大使館付武官として渡米しました。帰国後も、陸軍本部人事局長、国防部次官などを務め、1959年には第6軍団長に就任。1960年には陸軍士官学校校長に任命されましたが、5・16軍事クーデターへの参加を拒否したため、西大門刑務所に収監され、その後予備役に編入されました。

学者、政治家としての活動

1962年初め、アメリカに留学し、ニューメキシコ州立大学と南カリフォルニア大学で政治学の博士号を取得。その後、在ワシントン韓国問題研究所長、国連総会代表などを歴任しました。1976年に帰国後は、韓国外国語大学校大学院長、外交部外交安保研究員院長などを務め、駐イギリス兼アイルランド大使、駐バチカン大使も歴任しています。1988年には、国会議員に当選し、第21代国務総理に就任。1990年には、初の南北首相会談を実現させました。さらに、平壌を訪問し、金日成とも会談を行っています。1989年には昭和天皇大喪の礼、1990年には明仁の即位の礼に韓国政府代表として出席しました。

人物像とエピソード

姜英勲は、「碧昌ホ」というあだ名で呼ばれていました。これは、彼の故郷である平安北道碧潼郡と昌城郡出身の、生真面目で融通の利かない人を指す言葉です。姜自身も、回想録のタイトルに「碧昌牛」を使ったように、このあだ名を気に入っていたようです。また、1990年の平壌訪問中には、北朝鮮に残っていた妹と再会を果たしましたが、妹は「偉大な首領様の下でよく暮らしている」と述べたと言われています。この出来事は、当時北朝鮮に対して強硬な態度を示していた姜を困らせ、総理交代を狙ったものではないかという分析もなされました。二人の息子は共に弁護士として活躍し、娘婿は元文教部長官の呉天錫の息子です。また、軍人の金雄洙は妻の兄弟にあたります。

まとめ

姜英勲は、軍人、政治家、学者、外交官として、激動の時代を生き抜いた人物です。その生涯は、朝鮮半島の分断と、その中で翻弄されながらも祖国のために尽くした人々の姿を映し出しています。彼の経験は、現代の私たちにとっても重要な教訓となるでしょう。

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