姫川病院

姫川病院：糸魚川市で閉院した病院の歴史と現状

姫川病院は、かつて新潟県糸魚川市に存在し、糸魚川医療生活協同組合が運営していた病院です。1987年に開業しましたが、経営難のため2007年に閉院しました。その背景には、糸魚川市の医療事情と、病院を取り巻く社会経済的な要因がありました。

開業の背景

1984年、糸魚川市議会に病院誘致調査特別委員会が設置されました。当時の糸魚川市は、新潟県厚生農業協同組合連合会糸魚川病院（現在の糸魚川総合病院）を中心に診療所が点在していましたが、市民の有病率や女性の標準化死亡比が県の平均を上回る状況でした。医師不足と病床不足が深刻であり、高齢化社会の到来を見据えた市は、糸魚川病院の拡充に加え、市民による医療生活協同組合の設立を目指しました。

こうして糸魚川医療生活協同組合が設立され、1985年9月21日には1,380人の加入者による創立総会が開催されました。同年11月12日には新潟県知事の認可を取得し、1986年4月17日に地鎮祭が行われ着工、1987年5月1日に姫川病院が開業しました。114床の一般病床を有し、和漢診療や介護支援、温泉の引湯など、特色ある医療を提供していました。1991年には糸魚川総合病院が新築移転し改称。姫川病院とともに、地域の急性期医療を支える重要な役割を担っていました。

閉院とその後

しかし、診療報酬の切り下げや医師不足による一部診療科の廃止などから、姫川病院は経営難に陥ります。2007年6月4日、糸魚川医療生活協同組合は破産手続きに入り、弁護士に事後処理を一任。同年6月末をもって姫川病院は閉院しました。

入院患者20人は糸魚川総合病院へ転院し、外来患者は各地の開業医へと振り分けられました。糸魚川総合病院は地域の救急搬送の多くを引き受けることになりましたが、糸魚川医師会の協力や富山大学救急災害医学講座の応援、県および市からの医療秘書雇用の補助などにより、地域医療の崩壊を回避しました。

姫川病院の負債は22億円に達しました。当初の医療生協の出資額は2億3000万円でしたが、組合債の大量発行により約12億円もの追加資金を集め、病院施設の改修や医療機器の購入などに充てていました。債権者らは原告団を結成し、裁判所に損害賠償請求を起こしましたが、回収には至りませんでした。

現在の状況

閉院後、姫川病院の建物は長期間放置され、廃墟と化しました。地主は存在しますが、建物管理者は不在となっています。不法侵入が後を絶たず、2021年6月1日には不審火による火災も発生しています。糸魚川市は姫川病院の跡地利用について検討を進めており、地主からの相談も受けていますが、多額の費用がかかることが予想されるため、対応方針を決めかねている状況です。

アクセス

姫川病院の最寄り駅は、JR西日本大糸線の姫川駅です。姫川駅は、姫川病院の開業を見据え、地元住民と市が国鉄に陳情した結果、1986年に開業した請願駅です。姫川駅からは徒歩3分程度でアクセスできます。

姫川病院の閉院は、糸魚川市の地域医療に大きな影響を与えました。しかし、関係者の尽力により医療崩壊は回避され、現在も糸魚川総合病院を中心に地域医療が維持されています。姫川病院の跡地利用問題は未解決のまま残されており、今後の動向が注目されます。

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