子ほめ

子ほめ（こほめ）

「子ほめ」は、古典落語の伝統的な演目で、主人公の男が赤ん坊を褒めることで酒を得ようと奮闘する様子をユーモラスに描いています。本作品は、元々は上方落語に属し、東京の落語界では三代目三遊亭圓馬によって広められました。別名を『赤子褒め』とも呼ばれ、エピソードには地域や演者によるさまざまなバリエーションがあります。

あらすじ

江戸版

物語は、隠居のところにやって来た八五郎から始まります。八五郎は入ってすぐに酒を飲ませるように求めますが、隠居はそんなふうにただ求めるのでは酒は得られないと諭し、まずは相手にお世辞を言って喜ばせなければならないと教えます。例えば道で知人に出会ったときには、年齢を尋ねておだてるといいでしょうと助言します。 実は、八五郎には秘かに酒をタダで飲む目論見があります。最近、彼の友人である竹の家に赤ん坊が生まれ、そのお祝いに行けば酒を奢ってもらえると考えたのです。

喜んだ八五郎は早速町に繰り出しますが、出会った伊勢屋の番頭に対して言葉をかけるも、相手に年齢を聞くタイミングを逃し、褒め言葉が意味不明になってしまいます。結局、彼は酒を奢るどころか何も得られずに終わります。 その後、竹の家を訪ね、いよいよ赤ん坊を褒めるチャンスがやってきたものの、緊張してどうしても褒め言葉が思いつかず、最後の手段として赤ん坊の年齢を尋ねます。「一つだ」との答えに対して、「一つにしちゃあ大変お若い、どう見てもタダだ」と言い放ち、珍妙な展開になってしまいます。

上方版

一方、上方版でも物語の運びは似ていますが、微妙に異なる点がいくつも見受けられます。上方での設定では、アホの男がタダ酒を飲めるとのウワサを聞きつけ、実際は「タダの酒」と「灘の酒」を勘違いしながら、他人を褒めて酒を得る方法を教えられます。年齢や人相を褒めること、そして赤ん坊の場合には見た目を褒めることで親を喜ばせ、その対価としてごちそうを奢ってもらうという内容を教わります。

男は早速、町に出て伊勢屋の番頭に遭遇しますが、声をかけようとすると逆に褒められ、ごちそうを強要される始末。その後、彼は竹の家を訪れるが、赤ん坊に向かって無理に挨拶を教えあげようとしたり、意味不明な言葉を口にしてしまいます。最終的に年齢を聞くも、「今朝生まれた赤ん坊に年を尋ねるもんではない」と言われ、「今朝とはお若う見える」と言い放ち、さらなる困惑を招きます。

その他の情報

噺の中に登場する『長命丸』は、江戸時代の強壮剤であり、当時の男性たちの間で話題になりました。また、上方版は2つの系統が存在し、それぞれ異なる演者やスタイルによって伝えられてきました。サゲや結末に関しても演者ごとに微妙に異なるものの、共通するのはおかしみを誘う展開です。

主な演者

子ほめの演者には、三代目桂春団治や八代目春風亭柳枝、さらには多くの落語家たちが名を連ねており、それぞれの解釈や演技によって個性が生まれています。これにより、同じ演目でも多姿多彩な楽しみ方ができるのが落語の魅力です。しかし、観客を笑わせることが主体のこの演目は、観客とのやり取りを大事にし、演者の技量が試されます。

「子ほめ」は、単なる笑いを提供するだけでなく、人とのコミュニケーションの重要性や、思いやりを持った言葉の力を再認識させる、一味違った作品ともいえるでしょう。

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