子産

子産（しさん）

子産（紀元前？ - 紀元前522年）は、春秋時代の鄭に仕えた政治家であり、卓越した手腕で国を安定させたことで知られています。彼の功績は多岐にわたりますが、特に中国史上初の成文法を制定したことは特筆に値します。

生涯

子産は姫姓国氏の出身で、公孫僑とも呼ばれました。当時の鄭は、晋と楚という二大国に挟まれた小国であり、その地政学的な位置から常に大国の侵略に脅かされていました。国内も七穆と呼ばれる有力者が権力を争い、政治は不安定でした。

政治家として

子産は、混乱の中で頭角を現します。当初は子孔を補佐しましたが、子孔が君主の地位を狙うと諫めました。その後、子孔が殺害されると、子産は卿となり、政治の中心を担うことになります。

紀元前546年、晋と楚の間で弭兵の会が開かれると、子産はその調停役を務め、鄭に平和をもたらしました。内政面では、土地制度、軍制、税制の改革を断行し、国の基盤を強化しました。特に、土地の区画整理や新たな税制の導入は、画期的なものでした。

成文法の制定

子産の最も重要な功績は、紀元前536年に中国史上初の成文法を制定したことです。当時、社会秩序は崩壊しつつあり、従来の慣習法だけでは社会を維持することが困難になっていました。そこで子産は、法を明文化することで、人々の行動規範を示し、社会の安定を図ろうとしたのです。

しかし、この成文法の制定は、当時の知識人から批判を受けました。彼らは、法律による統治は人々の道徳心を低下させ、社会を混乱させると考えたのです。特に、儒教的な立場からは、為政者の徳による統治こそが理想であり、法律に頼るべきではないとされました。また、身分秩序を重んじる立場からは、法を民衆に知らせることは、身分秩序を乱す行為だとされました。

死とその後

紀元前522年、子産は亡くなりました。死に際して、後継者の子大叔に対し、寛容な態度で政治を行うことの難しさを説き、厳しい態度で臨むように遺言しました。孔子は子産の死を深く悼み、その仁愛の精神を称えました。

評価

子産は、春秋時代を代表する政治家の一人として、高く評価されています。彼の制定した成文法は、後の法家思想に影響を与えたとも言われています。しかし、司馬遷は『史記』において子産を「循吏列伝」の末尾に位置づけており、その評価は必ずしも高くなかったとする見方もあります。

子産を題材にした小説

宮城谷昌光『子産』講談社, 2000年

関連項目

中国法制史
* 中華法系

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