孔有徳

孔有徳（こう ゆうとく）

孔有徳は、明末から清初の激動期を生きた軍人です。その生涯は、明朝の武将から清朝の忠臣へと劇的な転換を遂げました。

生い立ちと明朝での活動

孔有徳は、山東省から遼東に移住した人々の末裔として生まれました。遼東が清の太祖ヌルハチによって侵攻されると、同郷の耿仲明と共に椵島（皮島）に渡り、明の将軍・毛文龍の配下となりました。しかし、毛文龍が袁崇煥に殺害され、後継者として陳継盛が任命されると、孔有徳はこれを不満とし、山東省の登州へ逃れ、登萊巡撫の孫元化に仕えました。

清への降伏と活躍

1631年、清の太宗ホンタイジが率いる軍勢が大凌河城を攻撃した際、孔有徳は救援を命じられましたが、その途中で反乱を起こしました。山東の各地を略奪した後、一旦は明朝に偽って降伏しましたが、翌年再び反乱を起こし、登州城を陥落させました。この時、旅順の副将・陳有時らも反乱に加わり、孔有徳は自ら都元帥を名乗り、勢力を拡大しました。しかし、萊州の攻略には失敗し、2将を失ったことで、耿仲明と共に清軍に降伏しました。

ホンタイジは孔有徳を厚遇し、恭順王に封じました。その後、孔有徳は清朝のために精力的に活動し、数々の重要な遠征に、自らが率いる火器部隊「天祐兵」を率いて参加しました。1636年のホンタイジの朝鮮征伐や、錦州・松山・杏山などの攻略戦で功績を上げ、1644年には睿親王ドルゴンに従い、李自成を追撃して関内に入り、山西、陝西、江南へと転戦しました。1642年には、八旗制度が漢人にも拡大され、孔有徳は正紅旗に属しました。

定南王としての活躍と最期

1646年、孔有徳は平南王に封じられ、明の桂王・朱由榔を追って湖南から広西、貴州へ進軍しました。その圧倒的な戦果により、定南王に昇進し、広西の平定に従事しました。しかし、桂王を南寧に追った後、貴州へ向かう途中で湖南の各地で蜂起が発生し、守将の要請で桂林へ引き返しましたが、明将の李定国に湖南への退路を断たれ、孤立してしまいました。桂林城を包囲され、陥落が迫ると、孔有徳は自害しました。

人物像

孔有徳は、戦国時代の孔子の末裔であるという説があります。桂林が攻撃された際、明臣の張同敞から「毛文龍の家僕ではないか」と侮辱された時、「余は大聖の後なり」と激怒したという逸話も残されています。その武勇と軍事的な才能は、清朝による中国平定に大きく貢献しましたが、その最期は、波乱に満ちた生涯を象徴するかのようでした。

後世への影響

孔有徳の死後、その勢力は娘の孔四貞とその婿である孫延齢に引き継がれました。孔有徳は、清朝初期の歴史において、重要な役割を果たした人物の一人として、その名を歴史に刻んでいます。

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