孝定太后

孝定太后

孝定太后（こうていたいごう、1546年12月11日 - 1614年3月18日）は、明の隆慶帝の妃嬪であり、万暦帝の生母です。李氏を姓とし、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生い立ちと入宮

孝定太后は、順天府漷県の建築労働者であった李偉と王氏の長女として生まれました。幼少期に関する記録は多くありませんが、嘉靖年間に裕王朱載坖（後の隆慶帝）の邸に入り、婢（側女）として仕えることになります。これは、当時の社会における身分制度を反映しており、彼女の出自が必ずしも高貴ではなかったことを示しています。

万暦帝の誕生と寵愛

嘉靖42年（1563年）、李氏は後の万暦帝となる朱翊鈞を出産します。隆慶帝にとって、嫡男や他の妻妾の子が早世していたため、この出産は非常に大きな喜びとなりました。これにより、李氏は隆慶帝の寵愛を受けるようになります。彼女の出産が、後の権力掌握への大きな転換点になったといえるでしょう。

皇貴妃から皇太后へ

隆慶元年（1567年）、隆慶帝の即位に伴い、李氏は皇貴妃に封じられます。そして、万暦帝が即位すると、彼女は慈聖皇太后と尊称されることになります。この地位は、単に皇帝の母というだけでなく、政治的にも大きな影響力を持つ存在であることを意味します。彼女の父である李偉も、武清侯に封じられ、一族もまた栄華を極めました。

晩年と逸話

孝定太后は、財貨を好み、仏教を深く信仰したと伝えられています。晩年には視力を失い、女医の王氏や彭氏が仕えることになりました。この時期に、彭氏が妊娠を隠して密かに出産し、生まれた子を殺害したという事件が起こります。万暦帝はこれに激怒しますが、李太后は彭氏を憐れみ、杖罪に処して追放するにとどめました。この逸話は、彼女の慈悲深さと、万暦帝との間の複雑な関係を示唆しています。この事件の翌年、孝定太后は崩御しました。

子女

孝定太后は、以下の4人の子女をもうけました。

朱翊鈞（万暦帝）
朱堯娥（寿陽公主）
朱堯媖（永寧公主）
朱翊鏐（潞簡王）
朱堯媛（瑞安公主）

万暦帝は、明朝を代表する皇帝の一人であり、その治世は長きにわたりました。また、他の子女たちも、それぞれに歴史に名を残しています。

伝記資料と登場作品

孝定太后に関する主な伝記資料としては、『明穆宗実録』や『明神宗実録』が挙げられます。これらの資料から、彼女の生涯や業績を知ることができます。

また、彼女を題材にした映像作品も存在します。

『大明王朝 〜嘉靖帝と海瑞〜』（2006年、中国） - 演：閻妮
* 「万暦首輔張居正」（2010年、中国） - 演：梅婷

これらの作品を通じて、彼女の人物像や歴史的背景をより深く理解することができます。

まとめ

孝定太后は、その生涯を通じて、明朝の歴史に大きな足跡を残しました。一介の婢から皇太后へと上り詰めた彼女の物語は、多くの人々に語り継がれています。彼女の人生は、当時の社会情勢や宮廷の権力闘争を反映しており、明朝史を理解する上で重要な人物の一人と言えるでしょう。

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