朱堯媖

朱堯媖（しゅ ぎょうえい）は、明の隆慶帝の四女として、隆慶元年（1567年）に誕生しました。彼女は、後に万暦帝となる皇帝の同母妹であり、李皇貴妃を母に持ちます。成長した彼女は、永寧長公主に封じられました。

万暦10年（1582年）、15歳を迎えた朱堯媖は、宦官の馮保と宰相の張居正の仲介により、富裕な商人である梁邦瑞（りょう ほうずい）に降嫁することになりました。この結婚は政略的なもので、梁邦瑞は当時、結核を患い病床に伏していましたが、大金を費やして公主の婿の座を手に入れたとされています。しかし、この結婚生活は幸福なものではありませんでした。結婚後、宮中の使用人たちは梁邦瑞に金品を要求し、それに応じられないと暴行を加えたと伝えられています。

結婚からわずか数ヶ月後の同年4月、梁邦瑞は病死しました。夫を亡くした朱堯媖は、若くして寡居の身となり、その後は再婚することなく生涯を終えました。彼女は処女のまま亡くなったとされています。この短い結婚生活は、彼女の人生に大きな影を落としました。

万暦20年（1592年）、文禄の役における日本との講和交渉の際、豊臣秀吉は講和の条件として、明の公主を後陽成天皇の妃にすることを要求しました。しかし、この要求は、明側の使節である沈惟敬（しん いけい）らが虚偽の報告をしたため、万暦帝に伝えられることはありませんでした。結果として、この講和交渉は決裂し、戦争は継続されました。朱堯媖の存在は、遠く離れた地での外交交渉にも影響を与える可能性があったと言えます。

朱堯媖は万暦22年（1594年）に亡くなり、清良山に葬られました。彼女の短い生涯は、政略結婚、夫の死、そして外交交渉に翻弄された、複雑で悲劇的なものでした。彼女の生涯は、明朝の皇族の生活の一側面を物語る、歴史的な出来事として記録されています。参考文献には、『明史』の公主伝や『明神宗実録』、『永寧長公主墓志銘』などが挙げられます。

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