クール宅急便

クール宅急便とは

クール宅急便は、ヤマト運輸が提供する宅急便サービスの一つで、特に生鮮食品や冷凍食品など、温度管理が重要な荷物の配送に特化したサービスです。このサービスは、冷蔵（0～10℃）と冷凍（-15℃以下）の2つの温度帯に対応しており、それぞれの温度帯に合わせた厳格な管理体制のもとで配送が行われます。

開発の経緯

クール宅急便の始まりは、1984年、当時のヤマト運輸社長であった小倉昌男氏の「荷物にも涼しい思いをさせてやれないものだろうか」という言葉がきっかけでした。当時、宅急便で扱われる荷物の約半分が食料品であり、その多くが保冷剤入りの発泡スチロール容器で梱包されていた状況を鑑み、小倉氏は冷蔵機能付きの配送システムの開発を提案しました。

当初、車両メーカーからは「冷凍帯に対応した配送車両の開発は困難」という意見があり、冷蔵・チルドの2温度帯でのサービスが検討されました。しかし、小倉氏は「冷凍サービスが無いのはおかしい」として3温度帯でのサービス提供にこだわり、最終的に経営会議もその意見に同意しました。その結果、配送トラックなどの開発には約150億円という巨額の費用が投じられました。

1987年8月から一部地域でテストサービスを開始。当初は集配車に搭載された冷凍用コンプレッサーが1基のみでしたが、夏の暑さに耐えられないことが判明したため、本サービス開始時にはコンプレッサーを2基に増設しました。また、北海道では冬の寒さで冷蔵・チルド帯の荷物が凍結してしまう問題が発生し、北海道仕様の車両には温度維持のためのヒーターが取り付けられました。

1988年4月、クール宅急便は正式にサービスを開始し、日本における生鮮食料品の冷蔵小口輸送の先駆けとなりました。

サービス内容

サービス開始当初は、「冷蔵（5℃以下）」、「氷温（0℃）」、「冷凍（-18℃以下）」の3温度帯でサービスを提供していましたが、家庭用冷蔵庫の実情に合わせ、1993年に氷温帯を廃止し、現在の冷蔵（0～10℃）と冷凍（-15℃以下）の2温度帯でのサービスとなっています。

利用状況

クール宅急便の配送量は年々増加しており、1989年度には1,958万個だったものが、1998年度には9,763万個にまで増加しました。現在では、宅急便の中核をなすサービスの一つとして、広く利用されています。

過去の問題点

クール宅急便は、配送する荷物の特性上、厳格な温度管理が求められますが、2013年10月には、一部の営業所で夏場に保冷用コンテナを開け放したまま作業していたために、内部の温度が大幅に上昇し、適切な温度管理が行われていなかったことが明らかになりました。

この事態を受け、ヤマト運輸は同年11月、新しい配送車の開発やシステムの見直しを主眼とした再発防止策を発表し、当時の社長や役員の減俸処分を行いました。

まとめ

クール宅急便は、生鮮食品や冷凍食品の配送に特化した、ヤマト運輸の重要なサービスです。厳格な温度管理と配送体制により、高品質な配送を実現しています。過去には温度管理の問題が発生しましたが、その反省を踏まえ、より安全で信頼性の高いサービス提供を目指しています。


参考文献

高杉良『挑戦尽きることなし』徳間文庫、1997年。ISBN 4198907994。

関連項目

冷凍冷蔵車
コールドチェーン

外部リンク

* クール宅急便

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