宇土城(うとじょう)
熊本県宇土市に存在した
日本の城で、別名「城山」や「鶴城」とも呼ばれています。ここでは、中世の宇土古城と近世の宇土城について解説します。
概要
宇土城は、
小西行長によって現在の宇土市古城町に築かれた平山城です。三重の
天守が建てられていたとされています。
関ヶ原の戦いで
小西行長が敗れると、
加藤清正の所有となり、清正は隠居城として改修を加えましたが、清正の死後、宇土城は廃城となりました。
宇土城の
天守は
熊本城に移築され、宇土櫓となったという伝承がありますが、
1927年の調査ではその痕跡は確認されていません。
1632年、加藤氏が改易されると、肥後国は
細川氏の領地となり、
1646年に細川光尚が従兄弟の行孝に3万石を分与し、宇土支藩が成立しました。しかし、
宇土藩は支藩であったため城を持たず、宇土陣屋を現在の新小路町に置き、城地は荒れ地となりました。
現在、中世の宇土古城跡は国の
史跡に指定され、「
史跡宇土城跡」として整備されています。建物跡、横堀、
城門などの遺構が復元され、古墳時代の箱式石棺墓も確認できます。一方、近世の宇土城跡は城山公園として整備され、石垣と堀の痕跡が残っていますが、公園整備によって旧状と異なる石積みがされています。公園内には
小西行長の銅像がありますが、これは架空の肖像です。
歴史
中世・宇土古城
宇土古城は、近世宇土城の西側、現在の宇土市神馬町に位置しています。遅くとも
平安時代中期には、宇土氏によって西岡台という独立丘陵に築かれました。地元では宇土古城を「西岡台」と呼んでいます。城は、中央の迫地を挟んで東側の千畳敷と西側の三城という二つの
曲輪からなる連郭式でした。
千畳敷は横堀で囲まれ、北から東にかけて複数の竪堀が設けられていました。近年の発掘調査では、多数の掘立柱建物跡、
虎口、
城門遺構が確認され、一部が復元されています。
1998年には、横堀跡から当時の土木作業工程を示す貴重な事例が発見されました。また、
城門遺構付近からは100点以上の石塔部材が出土し、廃城時に儀式が行われたことが示唆されています。
一方、三城では建物跡は少ないものの、柱穴の径が大きく、大型の建物が存在した可能性があります。また、苑池とみられる水たまり跡や、碁石とみられる石製品も発見されています。2011年の調査では、切岸が55~60度に整えられていたことが確認されました。三城の南西麓には幅約10m、全長約300mの空堀があり、戦国時代中期から後期に掘られたと考えられています。
千畳敷と三城の各所には矢穴があり、近世宇土城の石垣部材として用意されたものの、使われずに残ったものと見られています。三城の主郭北側には、庭園に使われていた可能性がある巨石も残っています。
西岡台の築城年代は不明ですが、一説には
1048年に
藤原頼通が下向した際に築かれたとされています。南北朝時代には宇土高俊が南朝方として活動し、
室町時代には宇土為光が肥後国守護となりました。しかし、為光は
菊池氏に討たれ、その後、
名和氏が約80年間城主となりました。
天正15年(
1587年)、名和顕孝は
豊臣秀吉に降伏しましたが、肥後
国人一揆の際に中立を保ったため改易となり、
名和氏の時代は終わりました。
近世・宇土城
天正16年(
1588年)、
小西行長は肥後国
宇土郡、益城郡、
八代郡を合わせて17万5千石を領有すると、宇土古城の東にある城山に新たな城を築く計画を立てました。
1589年頃から普請が開始され、城だけでなく、武家屋敷や城下町も水堀と
運河によって一体的に結合された「惣構」を形成しました。
慶長5年(1600年)の
関ヶ原の戦いで
小西行長が西軍に与すると、
加藤清正は宇土城を攻撃しました。9月19日に前哨戦が始まり、20日には城下での戦闘、21日には宇土城惣攻めが開始されました。小西勢は奮戦しましたが、10月2日には三の丸が抜かれ、10月13日には開城に合意し、翌14日に戦闘は終結しました。
戦後、清正は宇土城を自身の隠居城と定め、大規模な改修を行いましたが、
慶長16年(
1611年)に清正が亡くなると、翌
慶長17年(
1612年)に宇土城は破却されました。
1632年には加藤忠広の改易により肥後国は
細川氏の領地となり、
1637年の
島原の乱後、幕府は西国の廃城の徹底的な破却を命じ、宇土城も同様に破壊されました。城跡は荒廃し、石垣部材の抜き取りや土採りが行われました。
1646年に細川行孝が
宇土郡3万石を分封され、
宇土藩が成立しましたが、支藩であったため城は築かれず、宇土陣屋が設けられました。その後、行孝が轟泉水道を開通させたことで、旧城域北側を中心に大きく改変を受けました。明治時代には、旧二の丸が士族墓地となり、現在の市営墓地となっています。
参考文献
阿蘇品保夫「宇土城開城に関する新出史料―(慶長五年)一〇月一三日付清正書状について―」(『熊本史学』85・86号、2006年)
宇土市 編『宇土市史』宇土市、1960年。
『国立国会図書館デジタルコレクション 宇土郡誌』宇土郡、1921年。
関連項目
八代城
木山城
愛藤寺城
熊本城
キリシタン大名
日本の城一覧
外部リンク
肥後宇土古城
*
肥後宇土城