宇宙虫

概要

『宇宙虫』は、水木しげるによる漫画作品で、1965年に『別冊少年キング』で発表されました。本作は、宇宙から来た虫が、短期間で驚異的な進化を遂げ、人類の文明を追い越してしまうというSF的な物語です。水木しげるにとっては、『週刊少年マガジン』に次ぐ少年誌での作品であり、この作品以降、『少年キング』でいくつかの読み切りや連載作品を手がけるようになりました。

この作品は、1964年の貸本漫画『深雪物語』の一エピソード「宇宙虫の卵」をリメイクしたものです。『深雪物語』は竹取物語をモチーフにした時代劇で、作中では姫が求婚者たちに様々な難題を与えますが、その一つが宇宙虫を育てることでした。一方、『宇宙虫』では、舞台を現代に移し、平凡な少年が偶然宇宙虫を発見するという展開になっています。

また、『宇宙虫』は1970年に『週刊ポスト』に改稿版が掲載されました。物語の筋は同じですが、大幅に加筆されており、現在短編集に収録されているのは、この改稿版の方です。なお、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第3作第93話「進化妖怪かぶそ」は、この『宇宙虫』のエピソードを応用したものです。

あらすじ

物語は、アメリカの宇宙飛行士が月に行った際、宇宙虫が飛行士に卵を産みつけたところから始まります。その卵は、回り回って凡太という少年の手に渡り、やがて2匹の虫が孵化します。凡太は虫を飼おうとしますが、親に反対されたため、人目のつかない池の小島に虫を放します。

1ヶ月後、凡太が池の様子を見に行くと、繁殖し進化を遂げた虫たちが、すでに道具を使ってトンボやボウフラを狩猟していました。さらに数日後には、鉱物を掘り製鉄を行い、その1ヶ月後には、ミニチュアのようなビルや戦艦を建設していました。危険を感じた凡太の父親が偵察に行くと、池の付近では原爆の実験まで行われていました。

最終的に、宇宙虫たちはロケットを製作し、故郷へと帰って行きます。この物語は、宇宙虫が、人類が何億年もかけて成し遂げた進化を、わずか数ヶ月で達成してしまうという、驚異的な展開で締めくくられます。

書誌情報

『宇宙虫』が収録されている短編集は多数存在しますが、比較的最近の刊行物を以下に記載します（一部、絶版を含む）。

『幻想世界への旅』（ちくま文庫、1995年7月、ISBN 4-480-03063-8）
『水木しげる ビッグ作家究極の短編集』（小学館、1997年11月、ISBN 4-09-183883-9）
『水木しげるホラー劇場』（集英社ホームリミックス、2007年6月、ISBN 978-4-8342-4255-3）
『水木しげる 超1000ページ(上)』（INFASパブリケーションズ、2009年9月、ISBN 978-4-900785-94-6）
『水木しげる ビッグ作家究極の短編集』（小学館、2013年1月、ISBN 978-4-09-185076-8）
『ぽけっとまん 他』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2014年7月、ISBN 978-4-06-377517-4）

参考書籍

* 山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』YMブックス、2007年5月。ISBN 978-4-903548-08-1。

もう一度検索