宇宙配備宇宙監視衛星

宇宙配備宇宙監視衛星 (SBSS)

宇宙配備宇宙監視衛星、通称SBSS（Space Based Space Surveillance）は、アメリカ合衆国空軍が運用する軍事用の人工衛星システムです。その主要な役割は、地球軌道上を周回する様々な物体、具体的には運用中の人工衛星、役目を終えたロケットの上段、そして無数の破片からなるスペースデブリなどを継続的に監視し、それらの正確な位置や軌道を特定すること、すなわち「宇宙状況認識」（Space Situational Awareness, SSA）を実施することにあります。

開発の背景と目的

現代社会は、通信、航法、気象観測など、多くのサービスを人工衛星に依存しており、宇宙空間は私たちの生活に不可欠なインフラとなっています。しかしながら、地球周回軌道上には、活動中の衛星の他に、運用を終了した衛星やロケットの残骸などが大量に存在しており、これらは「スペースデブリ」と呼ばれています。これらのデブリは非常に高速で飛び交っており、稼働中の衛星や将来の宇宙ミッションにとって看過できない衝突のリスクをもたらしています。また、宇宙空間における安全保障上の懸念や他国の衛星活動の把握も重要性を増しています。

これまでの宇宙物体の監視は、主に地上のレーダー施設や光学望遠鏡によって行われてきました。しかし、地上のシステムには観測可能な範囲に限界があることや、天候に左右されるといった制約があります。SBSSは、宇宙空間から直接観測を行うというアプローチをとることで、地上のシステムの制約を補完・強化し、より広範囲かつ効率的な宇宙状況認識能力を実現するために計画されました。この衛星による宇宙監視の構想は、2001年頃から具体的な検討が開始されたとされています。

機能、運用、データ活用

SBSS衛星には、高度な光学センサーが搭載されています。このセンサーを用いることで、軌道上の物体を昼夜を問わず捉え、その位置情報や軌道要素に関する精密なデータを収集します。収集されたデータは分析され、物体の追跡、軌道の予測、そして他の衛星との衝突可能性の計算など、宇宙空間の安全管理やリスク評価のために活用されます。

打ち上げられたSBSS衛星の運用は、アメリカ空軍の宇宙優勢システム航空団の下にある宇宙状況認識群（Space Situational Awareness Group）が担当する体制がとられていました。SBSSシステムによって取得された観測データは、アメリカ空軍や国防総省といった軍内部の情報利用に加え、アメリカ航空宇宙局（NASA）にも提供されています。これらのデータは、国際宇宙ステーション（ISS）のような有人宇宙活動における軌道管理や、スペースデブリとの衝突回避に必要な情報として利用されてきました。

1号機の打ち上げ

SBSSプログラムの最初の衛星となるSBSS 1号機は、2010年9月25日、太平洋夏時間21時41分に打ち上げが実施されました。打ち上げには、オービタル・サイエンシズ社（現在のノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ）によって製造されたミノタウロス4型ロケットが使用され、カリフォルニア州に位置するヴァンデンバーグ空軍基地から軌道へ投入されました。SBSS 1号機は、地上約630キロメートルの高度を周回する軌道に入り、搭載された光学センサーによる24時間体制での宇宙物体の監視を開始しました。

ただし、SBSS 1号機が具体的にどれくらいのサイズのスペースデブリまでを検出できるのか、あるいはその観測能力に関する詳細な技術仕様については、軍事上の理由から一般には公開されていません。

宇宙状況認識におけるSBSSの重要性

SBSSのような宇宙配備型の監視システムは、増え続ける宇宙物体の追跡・管理において、地上システム単独では困難な広範囲の観測を可能にするという重要な利点を持っています。これにより、宇宙空間の状況をより正確かつ迅速に把握することが可能となり、人工衛星の安全な運用計画の策定や、新たな宇宙空間におけるリスクの早期発見に貢献します。これは、軍事的な側面だけでなく、全ての宇宙利用者が安全に宇宙空間を活用するための基盤を強化することにも繋がります。

SBSSは、複雑化する宇宙環境の中で、アメリカ合衆国が自国の宇宙アセットを保護し、宇宙空間における状況認識能力を高める上で、不可欠なシステムの一つと言えます。その観測データは、安全保障のみならず、宇宙活動全体の安全性向上に貢献する重要な役割を果たしています。

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