宇島鉄道

宇島鉄道について

宇島鉄道（うのしまてつどう）は、福岡県豊前市の宇島駅から大分県の耶馬渓駅までを結んでいた鉄道路線で、軽便鉄道として知られています。この鉄道は、観光客をターゲットにするために1914年（大正3年）に開業されました。当初は耶馬渓観光を促進する目的で、前年に開業された耶馬渓鉄道に対抗しての運営がなされました。

開業とその後の発展

宇島鉄道は1914年の1月21日に宇島駅から耶馬渓駅まで開業しました。開業時の距離は約17.7kmで、762mmの軌間を持ち、全線が非電化の単線で運用されていました。路線の最急勾配は16.7‰で、当時の交通手段としては比較的便利なものでしたが、営業成績は期待通りのものではありませんでした。

拡張の試みと廃止

宇島鉄道は1921年と1925年に羅漢寺駅までの延長線敷設を申請しましたが、既存の耶馬渓鉄道があるため却下される結果となります。その後、1934年には下唐原駅から耶馬渓駅間の路線が廃止され、1936年には残りの区間も廃止されました。これにより、宇島鉄道は全線が姿を消すこととなりました。

運行と駅の状況

1932年の運行状況では、宇島駅から友枝駅間に2往復、さらに宇島駅から耶馬渓駅間には3往復が運行されていました。所要時間は全線で約1時間から1時間6分程度でした。この頃、特等車と並等車が用意されていたため、乗客は選択肢の中から自分のニーズに合わせたサービスを受けることができました。

車両と運営

宇島鉄道の開業時には、コッペル製のBタンク式蒸気機関車やボギー客車などが導入され、様々な車両が増備されました。しかし、経営が厳しくなる中で、これらの車両も次第に数を減らしていきました。

現在の状況と遺構

宇島鉄道の廃線から60年以上が経過し、その痕跡を追跡することは難しくなっています。特に宇島駅と黒土駅の間の線路跡は市街地に埋もれてしまい、存在が確認できません。しかし一部の区間では線路の盛土が残っている他、黒土駅から広瀬橋駅までの間には、橋の跡が残されており、その姿を観察することができました。

終着駅であった耶馬渓の駅舎は現存しており、現在は公民館として利用されています。周辺には地域の鉄道について学ぶための案内板も設置されており、地域の人々にとっての歴史的な拠点となっています。

まとめ

宇島鉄道は短い運営期間の中で多くの変遷を経験しましたが、今日においてもその歴史は地域文化の一部として生き続けています。廃線跡や残された遺構を巡ることで、かつての鉄道の栄光や影響を振り返りながら、地域の歴史に思いを馳せることができます。

もう一度検索