軽便鉄道の概要
軽便
鉄道とは、通常の
鉄道よりも規格が簡素であるため、低コストで建設される
鉄道を指します。特に、低規格であることで建設費や維持費を抑えることができ、軽量なレールが使われることが一般的です。そのため、急な曲線や勾配が用いられ、
狭軌(特に762mmや600mm)の
軌間が採用されることが多く、これが最高速度の低下や輸送力の制限につながることがあります。しかし、このような
鉄道は産業が未発達で、限られた量の輸送力しか求められない地域に建設されることが多いのが特徴です。
日本における軽便
鉄道は、法律上「
軽便鉄道法」に基づいているが、さらに広い意味においては国鉄線や他の
軌道法に関わる軌道線も含まれることがあります。一般的には1067mmより狭い
軌間の営業
鉄道が対象となり、762mm(2フィート6インチ)が多く使用されています。中には600mmや914mmの例も存在し、さらに1067mmや1435mmの路線も建設されたケースがあります。
日本における軽便鉄道の歴史
初期
日本で最初の軽便
鉄道は
1880年に開業した
工部省釜石鉱山
鉄道であり、イギリスから輸入された838mmの
軌間を持つ鉱石輸送用の
鉄道でした。しかし、
1882年には廃線となり、その後の
鉄道開発は
1887年に制定された私設
鉄道条例に影響を受けることになります。政府は、私設
鉄道法において国鉄と同じ1067mmを推奨し、軽便
鉄道の開業はほとんど行われなくなりました。
拡大期
1906年に
鉄道国有法が公布され、私設
鉄道の開業条件が厳しくなりました。この状況の中で
軽便鉄道法が
1909年に施行され、以降軽便
鉄道の建設が全国に広がりました。政府はこの法律を活用して地方の
鉄道路線を多数建設し、軽便
鉄道の規制は緩く、これによって多くの地域で軽便
鉄道が誕生しました。しかし、1940年代以降、
モータリゼーションが進むにつれて軽便
鉄道の運行は次第に衰退していきました。
衰退期
1930年代以降、軽便
鉄道は新たな開業がほとんどなくなり、一部は戦時中に廃線となりました。戦後も
モータリゼーションが進み、自動車交通が普及する中で、軽便
鉄道の多くは1970年代までに消滅しました。ただし、
北海道では殖民軌道が運営され続けたものの、次第に役割を失っていきました。
現存する軽便鉄道
軽便
鉄道の中で、現在でも営業している路線はごくわずかです。四日市あすなろう
鉄道や三岐
鉄道北勢線、黒部峡谷
鉄道などが残っており、すべて電化されています。また、森林
鉄道などの産業用軌道も存在し、
動態保存される取り組みが各地で進められています。特に、
北海道や地方の遊園地では軽便
鉄道形式の遊戯施設が多く存在し、旅行者に親しまれています。
保存活動
軽便
鉄道に関する保存活動も活発に行われており、
動態保存を目的としてさまざまな場所で活動が展開されています。丸瀬布森林公園や、まむろがわ温泉などがその代表例です。また、
伊予鉄道の「
坊っちゃん列車」は、軽便
鉄道の遺産を形を変えながら現在でも運行され、多くの観光客を魅了しています。
このように軽便
鉄道は、日本の
鉄道史において重要な役割を果たしてきました。その背景や現状を知ることは、地域の交通発展における一つの側面を理解する手助けとなるでしょう。