宇都宮公綱

宇都宮公綱の生涯と武勇

宇都宮公綱（うつのみや きんつな）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した武将で、宇都宮氏の第九代当主にあたります。彼の父は宇都宮貞綱とされ、母は長井時秀の娘である可能性もあります。公綱は、名将楠木正成に「坂東一の弓取り」と評価されるほど、強大な武力を持っていました。

若き日の彼

1302年、宇都宮貞綱の子として生まれた公綱は、元々は北条高時の偏諱を受けて「宇都宮高綱」という名で知られていましたが、後に改名します。彼が初めて注目を集めたのは、1333年の元弘の乱の際で、その時彼は北条高時の命で上洛し、摂津国の四天王寺にて楠木正成と直面します。正成は数の上で彼より優位に立っていましたが、公綱の戦術的な思考と勇敢な戦いぶりに恐れをなし、持久戦を選びました。

公綱もまた正成を恐れ、直接対決を避けたため、戦いは決着がつかないまま終わります。正成はこの戦闘の際、宇都宮氏の勇猛さや紀清両党の強さを称賛し、戦争での死を軽く見なし「命を捨てることは塵や芥よりも軽い」と評しています。

戦闘と降伏

その後も公綱は千早城攻めなどに参戦し、軍事的な活躍をし続けます。しかし、六波羅探題の滅亡後、彼は後醍醐天皇の綸旨を受けて官軍側に降伏し、さらにその後は建武の新政で雑訴決断所の奉行職を務めることになります。

1335年の中先代の乱後、足利尊氏が後醍醐天皇から離反すると、公綱は尊氏軍と戦いますが敗れ、翌年に尊氏に降伏して北朝方に加わります。北朝方となった公綱は、南朝側の北畠親房の軍勢に攻め込まれ、重臣が討ち取られる危機に立たされる中、自身もまた波乱の運命を辿ることになりました。

後年の活動と不遇

足利尊氏が九州に転戦する際、彼は再び天皇のもとに帰参することを選び、その後、北畠顕家の下で戦線を駆け巡りました。顕家の死後も、東国における南朝側の支柱としての役割を果たし、後村上天皇からも高い信任を受け続けます。しかし晩年の公綱は不遇な時代を過ごし、歴史の中でその影が薄れてしまう結果となります。

文才としての公綱

公綱はその武力の裏に、和歌に対する優れた才能も持ち合わせていました。彼の作品は『新続古今和歌集』に収められ、武士としての戦いだけでなく文化人としての側面も持つことが特筆されています。

1356年11月25日、彼は55歳でその生涯を閉じました。公綱の足跡は、武将としての力強い印象を残し、同時に彼の文才からも多くの後世に影響を与えています。

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