宇都宮城釣天井事件

宇都宮城釣天井事件

宇都宮城釣天井事件（うつのみやじょうつりてんじょうじけん）は、江戸時代の1622年に発生した政治的事件であり、宇都宮藩主で江戸幕府の年寄であった本多正純が、将軍徳川秀忠の暗殺を企てたという疑惑により、改易され流罪となったものである。しかし、実際には彼による暗殺の計画自体は存在せず、改易の原因は他にあったとされている。

背景

本多正純の父、本多正信は将軍秀忠の側近として重要な地位を占めていた。正純もまた、徳川家康の側近として名を馳せ、昇進を続けていった。家康と正信が相次いで亡くなった後、正純は地位をさらに高め、下野小山藩から宇都宮藩に移封されるなど、その権力を誇示していた。しかし、権勢が増すにつれて、秀忠やその周囲からは嫉妬や恨みを買う存在となっていった。

正純は、元和5年に亡き家康の遺命を盾に、他の有力大名を転封させつつ自らの地位を強化し、周囲との摩擦を生んだ。特に、他の大名家や旧知の者たちからの反感が募り、次第にその存在は疎まれるようになっていった。

経過

元和8年、秀忠が日光参拝後に宇都宮城に宿泊する予定があったため、正純は城を整備し、将軍を迎える準備を進めていた。しかし、秀忠の姉から不平の声が上がり、急遽宿泊地が変更されることとなった。これが正純にとって悲劇の始まりであった。

その後、正純は藩を持つ立場から、他の藩の改易に立ち会うことになった。さらに、秀忠からは暗殺未遂や鉄砲の秘密製造などの無実の罪が突き付けられ、所領を召し上げられた。正純はこれらの罪を否定したが、秀忠の怒りが増し、改易の運命が決してしまった。

正純は流罪にされ、久保田藩に預けられることとなった。晩年の彼はわずかに与えられた石高で孤独に生涯を終えた。

波紋

当事件は広まる中で、正純が謀反を画策していたという証拠は何も見つからず、秀忠も疑念の真相を調査させて不審を晴らしていたことが報告されている。この一連の経緯は、正純に対する嫉妬や便乗した者たちの策略や陰謀によるものだとする見方もある。秀忠自身もまた、父・家康の代から影響力を持つ正純を疎ましく思っていたことが加わって、事件をさらに複雑にしていった。

この事件は、国際的にも広まり、イギリス商館やオランダ商館でも報告され、さまざまな形で語られることになった。時を経て、講談や歌舞伎の題材としても採られ、後の世代まで関心を集め続けた。また昨今では、映画やテレビドラマなどでも取り上げられることが増え、いまだに多くの人に知られている。

民話「つり天井」

宇都宮市には、「つり天井」という民話が伝わっている。この物語は、正純と庄屋の娘との恋物語を絡めながら、宇都宮城の釣天井の伝説が語られている。この民話は、秀忠の予定変更と正純の改易という歴史的事実を背景に描かれており、正純の姿は語り継がれる中で描かれるが、「将軍様」としての登場はしばしば徳川家光であるとされる。民話を通じて、当時の人々の心情や思惑が反映され、今日でも親しまれている。

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