イギリス商館

イギリス商館とは

イギリス商館は、江戸時代初期の1613年から1623年までの間、イギリス東インド会社が肥前国松浦郡平戸（現在の長崎県平戸市）に設置した貿易拠点です。当時のイギリスはグレートブリテン王国として成立しておらず、イングランド王国とスコットランド王国の同君連合でしたが、便宜上「イギリス」という呼称が用いられています。

イギリス商館設立の経緯

1600年、オランダ船リーフデ号が豊後国（現在の大分県）に漂着し、その乗組員の一人であったイギリス人、ウィリアム・アダムス（三浦按針）が徳川家康の外交顧問として重用されました。アダムスからの情報を受けたイギリス東インド会社は、ジェームズ1世の許可を得て、アダムスを仲介役として日本との貿易関係を築く計画を立てました。1613年、ジョン・セーリスが平戸に到着し、アダムスの紹介で徳川家康に謁見し、通商許可を得ることに成功しました。

商館の活動

セーリスは平戸に商館を設立し、リチャード・コックスを商館長に任命しました。商館は、イギリス人商館員や日本人使用人を増やし、平戸を拠点に東南アジア各地との貿易を行いました。しかし、着任早々、コックスはオランダ人がイギリス人を装って海賊行為を行っていることに衝撃を受けます。オランダとの対立が激化するなか、コックスは幕府に対し、オランダの悪事を訴え、自国の優位性を主張しました。

二港制限令と商館の衰退

1616年、江戸幕府はヨーロッパ人の貿易を長崎と平戸に制限する二港制限令を発令しました。この背景には、コックスの発言が幕府に警戒感を抱かせた可能性が指摘されています。さらに、キリスト教弾圧の影響や、イギリスとオランダの対立が商館間の対立に発展し、日本市場を巡って先行するオランダが有利な状況となりました。また、平戸藩や在留中国人との取引における売掛金問題、明との貿易計画の失敗なども重なり、イギリス商館の経営は悪化の一途を辿りました。

商館の閉鎖とその後

1623年、アンボン事件が発生し、イギリス東インド会社はコックスの責任を問い、平戸の商館を閉鎖することを決定しました。同年11月12日（1623年12月23日/1624年1月2日）、イギリス商館は閉鎖され、コックスらは日本を去りました。その後、イギリス商館が復活することはなく、日英間の貿易は長らく途絶えることとなりました。

商館跡

イギリス商館が平戸のどこに設置されたのか正確な場所は不明ですが、鏡川下流にあったオランダ商館の近くと推定されています。現在、長崎県平戸市岩の上町の幸橋のたもとに商館跡の碑が建てられています。

参考文献

金井圓「イギリス商館」-『国史大辞典 1』（吉川弘文館、1979年） ISBN 978-4-642-00501-2
岩生成一「イギリス商館」- 日蘭学会 編『洋学史事典』（雄松堂出版、1984年） ISBN 978-4-841-90002-6

関連項目

日英関係史
日英和親条約
* オランダ商館

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