宇野功芳

宇野功芳：独自の視点でクラシック音楽を語った評論家

宇野功芳（うのこうほう、1930年5月9日 - 2016年 6月10日）は、日本の音楽評論家、指揮者です。東京都に生まれ、国立音楽大学声楽科を卒業しました。彼の父は漫談家の牧野周一で、弟にはジャズシンガーの牧原弘二（宇野弘二）、帝京大学助教授の宇野道義がいます。なお、「功芳」は筆名で、本名は宇野功（いさお）です。幼少期から音楽に親しみ、合唱活動にも熱心でした。

生涯

1930年、東京で生まれた宇野は、幼少期から音楽に触れる機会が多くありました。4歳で童謡の会に入り、小学校時代は童謡を歌っていました。旧制中学時代には合唱に熱中し、大学では声楽を学びました。しかし、体調を崩し肺結核を患ったことで闘病生活を送りました。この間、敬愛する指揮者ブルーノ・ワルターに手紙を送ったことがきっかけで、音楽評論家としての道を歩み始めます。

最初は評論家になることを不本意に感じていましたが、次第に音楽雑誌などで執筆活動を行うようになり、独自の視点と辛口な批評で注目を集めました。1989年に出版した『クラシックの名曲・名盤』はベストセラーとなり、彼の名前は広く知られるようになりました。文筆活動の傍ら、大学の合唱団の常任指揮者も務め、合唱、管弦楽の両分野で多くのレコード、CDをリリースしています。また、四柱推命にも興味を持ち、著書の中で演奏家を占うなど、ユニークな一面も持ち合わせていました。2016年、老衰のため86歳で生涯を閉じました。

評論家としての特徴

宇野の評論は、独自の鑑識眼と断定的な表現が特徴です。演奏家の視点を反映させた主観的な批評を展開し、「○○だ」「○○である」といった言い切り表現を多用します。良いと思った演奏は手放しで褒める一方、悪いと思った演奏は容赦なく酷評することで知られています。その辛口な批評は、クラシックファンから熱烈な支持を受ける一方、批判的な意見も多くありました。彼の文章は「ウノ語」とも呼ばれ、その独特な言い回しはパロディの対象となることもありました。

しかし、宇野は「音楽評論家である以上、好き嫌いではなく良し悪しを語らなければならない」と主張し、人気や評判に左右されず、自身の信念に基づいた批評活動を貫きました。

評論家としての功績

宇野の評論活動は、日本のクラシック音楽の受容に大きな影響を与えました。長年、日本では評価の低かった指揮者ハンス・クナッパーツブッシュを一貫して評価し、彼のディスクが店頭から消えるのを防ぎました。また、ピアニストのエリック・ハイドシェックを絶賛し、彼の日本での演奏機会を増やし、廃盤になっていたディスクの再発売にも貢献しました。日本人指揮者の朝比奈隆を支持し続け、彼の人気を高め、ブルックナーの音楽をクラシックファンに浸透させるなど、その功績は多岐に渡ります。その他にも、オットー・クレンペラー、ロヴロ・フォン・マタチッチなど個性的な演奏家を擁護しました。

指揮者としての活動

評論家としての名声が先行しがちですが、宇野自身は合唱指揮者を本業と捉えていました。彼が指揮したレコード、CDは50枚以上に及び、その多くが合唱の分野です。特に女声合唱に魅力を感じ、モーツァルトの作品や日本の歌謡曲を女声合唱に編曲し、演奏しました。オーケストラ指揮者としては、古典派とロマン派の作品を中心に演奏し、モーツァルト、ベートーヴェン、ブルックナーなどを得意としました。アマチュア団体のアンサンブルSAKURAを指揮したCDも発売しており、その独特な解釈は注目を集めました。

著作

宇野は、数多くの著書を執筆しました。
『たてしな日記』
『ブルーノ・ワルターレコードによる演奏の歩み』
『モーツァルトとブルックナー』
『名曲とともに』
『オーヴェルニュの歌宇野功芳随筆集』
『フルトヴェングラーの名盤全レコード批評』
『音楽には神も悪魔もいる宇野功芳の世界』
『僕の選んだベートーヴェンの名盤』
『オーケストラのたのしみ僕の名盤聴きくらべ』
『クラシックの名曲・名盤』
『名演奏のクラシック』
『交響曲の名曲・名盤』
『協奏曲の名曲・名盤』
『名指揮者ワルターの名盤駄盤全盤レコード番号・CD番号付き』
『フルトヴェングラーの全名演名盤』
『魂に響く音楽』
『宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版』
『宇野功芳の白熱CD談義ウィーン・フィルハーモニー』
『指揮者・朝比奈隆』
『わが魂のクラシック』
『いいたい芳題』
『モーツァルト奇跡の音楽を聴く』
『宇野功芳の「クラシックの聴き方」』
『宇野功芳樂に寄す』
『ベートーヴェン不滅の音楽を聴く』
『演奏の本質宇野功芳対話集』

これらの著作は、彼の音楽に対する深い知識と情熱を伝えるとともに、クラシック音楽ファンにとって貴重な資料となっています。

宇野功芳は、その独特な批評スタイルと音楽への情熱で、日本のクラシック音楽界に大きな足跡を残しました。彼の活動は、これからも多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

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