宇野正美

宇野正美：聖書と国際政治を繋ぐ異色の思想家

宇野正美氏は、国際時事問題とユダヤ問題を専門とする講演者、著述家である。1942年大阪市生まれ。大阪府立大学経済学部卒業後、高校教師を経て、1975年に「中東問題と聖書研究センター」を設立。聖書をベースとした独自の視点から、世界情勢を鋭く分析し、数々の予言的発言で注目を集めてきた人物だ。

経歴と思想：預言と警鐘

大学時代は学生運動に身を投じ、共産主義に傾倒していた時期もあったという宇野氏だが、19歳の時に聖書と出会い、人生観が大きく変わる。教師時代から中東情勢への関心を深め、イスラエルのメナヘム・ベギン首相と交流を持つなど、国際的な視野を広げていく。1986年には『ユダヤが解ると世界が見えてくる』がベストセラーとなり、一躍時の人となる。しかし、この成功は同時に、反主流派への転落という代償を伴うこととなる。

宇野氏の思想の中核をなすのは、聖書に基づいた預言である。ただし、宇野氏自身は「聖書発想を合わせた複眼志向で世界を読む」と表現しており、単純な予言ではなく、聖書からの洞察と多角的な分析を組み合わせた独自の解釈であることを強調している。

リーマンショックやバブル景気、金融ビッグバンなど、過去の出来事に対する宇野氏の警鐘は、的中したものもあれば、外れたものもある。しかし、いずれも当時の社会情勢を鋭く捉え、潜在的なリスクを的確に指摘していた点で注目に値する。その分析は、経済、政治、社会の様々な側面を考慮し、歴史的背景や国際関係を踏まえた上で展開される。例えば、金融ビッグバンの危険性を江戸時代の帳合米取引に例えて解説するなど、独創的な説明で知られる。

近年では、イスラエルによる対イラン攻撃、エジプト・イスラエル平和条約の破棄、世界統一政府の樹立などを予想している。また、新型インフルエンザの人工説や、太陽活動と地震・気候変動の関係についても言及している。ただし、これらの予想の中には、「フォトンベルト」や「惑星二ビル」の接近といった、科学的根拠が乏しいものも含まれている点には注意が必要だ。

反シオニストへの転向：ユダヤ問題への深化

初期にはイスラエル政府関係者とも親交があった宇野氏だが、その後、ユダヤ問題への関与を深める中で、反シオニストへと転向する。世界的な影響力を持つユダヤ人の「支配力」に注目し、シオニズムや国際主義者集団による世界支配戦略を批判するようになる。

その転向のきっかけとなったのは、ベストセラーとなった『ユダヤが解ると世界が見えてくる』において、ホロコーストの犠牲者数に疑問を呈したことによる反発だ。これによって、反ユダヤ主義者と誤解されたと宇野氏自身は述べているが、同時にユダヤ人の歴史や文化、その強靭な民族性への深い理解を示す発言も見られる。

その後、アーサー・ケストラーの『第十三支族』に影響を受け、アシュケナージ系ユダヤ人とスファラディー系ユダヤ人を区別し、ユダヤ人の歴史を再分析。ホロコーストをシオニストとナチスの癒着、アメリカの影響力など、政治的な謀略として解釈するようになる。

さらに、ADLやAIPACなどのユダヤ系団体、タルムードの記述などを引用しながら、シオニズムや国際主義者集団の活動を批判。彼らこそが「世界を牛耳ろうとしている」と主張し、その背後にはサンヘドリン、イルミナティ、フリーメイソンといった勢力が存在すると指摘する。

日本近代史と中東和平：独自の解釈

宇野氏は、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争など日本近代史における外国勢力の関与についても独自の分析を行い、国際的な陰謀論的な視点を取り入れている。

中東和平に関しては、アシュケナージ系ユダヤ人の衰退と中東和平の実現、そしてその後の第三次世界大戦勃発を予想している。EUをベースとした世界統一政府から世界的な独裁者が登場し、終末が訪れるという聖書に基づいた終末論的な見解も示している。

古代ユダヤ人と日本：日ユ同祖論

宇野氏は、古代ユダヤ人が幾度も日本へ渡来したという説を唱えている。紀元前からの複数回に渡る渡来を主張し、その影響が日本の歴史、文化に深く根付いているとする「日ユ同祖論」の一種と言えるだろう。

まとめ：多角的な視点と論争を呼ぶ主張

宇野正美氏の主張は、聖書、歴史、経済、政治など多様な分野にまたがり、独自の視点と鋭い分析に基づいている。しかし、その主張には、科学的な根拠が乏しいものや、陰謀論的な要素も含まれており、常に議論を呼ぶ存在である。それでも、彼の主張は、既存の枠にとらわれない発想と、世界情勢に対する深い洞察を示しており、多くの読者に衝撃と思考の糧を与え続けていることは事実である。

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