守分勉

守分 勉（もりわけ つとむ）

日本の銀行家。中国銀行の元頭取、および会長。大正5年（1916年）4月19日に生を受け、平成12年（2000年）8月16日に85歳でその生涯を閉じた。旧姓は藤井。

生い立ちと教育

守分勉は、中国地方各地で税務署長を務めた地主、藤井宇一郎の五男として、現在の広島県福山市にあたる深安郡千田村に生まれた。旧制中学校は地元の広島県立福山誠之館中学校（現在の広島県立福山誠之館高等学校）に進み、1934年に卒業。その後、旧制松江高等学校を経て京都帝国大学法学部で法律を学び、1942年に卒業した。

キャリアの転機

大学を卒業した守分は、まず神戸海上保険会社（現在のあいおいニッセイ同和損害保険）に入社し、社会人としての第一歩を踏み出した。しかし、その翌年である1943年、守分家の婿養子となるという人生の大きな転機を迎える。この縁が、その後の銀行家としての道を切り拓くこととなる。

中国銀行での歩み

1948年、守分は中國銀行（現在の中国銀行）に入行した。入行後、倉敷駅前支店や倉敷支店など、主要拠点の支店長を歴任し、銀行業務の最前線で経験を積んだ。その手腕が認められ、1959年には取締役に就任。以降、取締役審査部長（1961年）、常務取締役総務部長（1963年）、専務取締役（1966年）、副頭取（1976年）と順調に昇進を重ねていった。そして1977年、義父である守分十の死去に伴い、中国銀行の頭取に就任した。

頭取としての経営と改革

頭取に就任した守分は、約10年間にわたり経営のトップとして中国銀行を率いた。この間、一貫して自主的かつ健全な経営方針を堅持した。また、金融を取り巻く環境の変化に積極的に対応すべく、時代に即応した経営戦略を次々と打ち出した。

具体的には、組織運営の根幹に関わる人事諸制度の大規模な整備と改革を実行。これにより、行員のモチベーション向上や組織の活性化を図った。また、事務処理の効率化と正確性を高めるため、事務管理体制の強化にも尽力した。顧客へのサービス向上と利便性拡大を目指し、店舗網の計画的な整備と拡充を進めたほか、当時としては先端的な総合オンライン体制への移行を強力に推進し、銀行業務のIT化を大きく前進させた。さらに、事業領域の拡大と多角化を見据え、相次いで関連会社の設立にも取り組み、中国銀行グループの基盤強化に貢献した。

地域社会への貢献

守分は銀行経営のみならず、地域社会の発展にも深い関心を寄せ、精力的な活動を行った。岡山県の経済研究を推進する岡山経済研究所、そして地域の文化振興に寄与する吉備路文学館の設立に尽力したことは特筆される。また、教育分野においても、学校法人山陽学園の理事長を長きにわたり務めるなど、次世代の育成にも貢献した。これらの活動は、経済、文化、教育といった多方面から岡山県を中心とする地域社会の活性化を支えるものであった。

栄典と晩年

長年にわたる銀行経営と地域社会への貢献が高く評価され、1981年には藍綬褒章を受章。さらに1986年には勲三等旭日中綬章という栄誉に浴した。頭取を退いた後は、1987年に会長に就任し、銀行経営を見守り続けた。1989年には相談役となり、第一線からは退いたものの、その経験と識見は重んじられた。そして2000年8月16日、肺炎により85歳で波乱に富んだ生涯を閉じた。

守分勉は、激動の時代において中国銀行の経営近代化と盤石化を推進しただけでなく、地域経済・文化・教育の発展にも多大な足跡を残した、岡山財界を代表する人物の一人と言える。

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