安中公害訴訟

安中公害訴訟 概要

安中公害訴訟は、1937年から1986年にかけて群馬県安中市周辺で発生した公害に関する訴訟です。この事件は、東邦亜鉛の安中製錬所からの排煙や廃液が原因とされ、主にカドミウムが環境に放出されました。その結果、地域の田畑での稲や桑の立ち枯れ、カイコの生育不良、碓氷川の魚の大量死など、さまざまな被害が報告されました。1986年、東邦亜鉛は責任を認め、被害を受けた農民に対して4億5000万円の賠償を行い、和解に至りました。この訴訟は、企業の故意責任が認められた特異な事例としても知られています。

歴史

安中公害事件は、日本亜鉛製錬株式会社が1937年に安中製錬所を設立し、操業を開始したことに始まります。最初の公害被害はカイコの生育不良でしたが、公害の影響は次第に広がり、1938年には住民の間で公害反対運動が始まりました。これは、初めての補償契約交渉が1941年に結ばれ、工場側が土地を安価で買い取るかわりに防毒林にするという内容でしたが、実際には工場側がその土地を無断で利用したため、紛争が続きました。

その後、日本亜鉛製錬は東邦亜鉛に社名を変更し、1950年代には国会議員が住民を支援する動きも見られましたが、効果的な活動は限られました。また、東京大学による水質検査や土壌調査が行われましたが、結果の公表を拒否されたことも懸念されました。

住民運動の展開

1968年に富山県でのイタイイタイ病の報道が影響を鑑み、住民たちは自らの被害を訴える動きを強化しました。彼らは壁新聞を作成し、検診を行うなどの活動を通じて公害問題を広めました。1970年には、安中公害弁護団が結成され、法的手続きが進められる中、住民が被害を訴える運動は加速しました。

1971年には、前橋地裁での訴訟が始まり、1982年には裁判所が東邦亜鉛に対して故意責任を認め、賠償額を7993万円とする判決が出されました。この間、住民からの訴えが続き、1985年には東京高裁による和解勧告が出されました。

和解と影響

1986年、最終的に東邦亜鉛が住民に対して4億5000万円の賠償を行う形で和解が成立し、公害防止に関する協定が結ばれました。この協定により、住民は定期的な立ち入り調査が認められ、環境改善に向けた取り組みが始まりました。以降、新たな協定がいくつか締結され、現代でもその内容は継続的に更新されています。

安中公害訴訟は、企業の責任を追及する住民運動の重要な例として、今もなお多くの教訓を提供しています。公害問題は過去のものではなく、現在でも環境保護の重要性が求められる中で、その影響を再認識する機会となるでしょう。

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