イタイイタイ病

イタイイタイ病（イタイイタイびょう）

概要

イタイイタイ病とは、岐阜県の三井金属鉱業神岡事業所が排出したカドミウムを含む未処理廃水が原因で、富山県の神通川下流域で発生した公害病です。この疾病は、第二次世界大戦後の高度経済成長期における日本の四大公害病の一つとして知られています。病名の「イタイイタイ」は、患者が痛みを訴える声が由来であり、特に女性が多く発症しました。2024年には、最終的な認定患者が一人もいなくなりましたが、調査は続けられています。

健康被害

イタイイタイ病は、カドミウムによって引き起こされる多発性近位尿細管機能異常症や骨軟化症といった慢性疾患が主な症状です。これらの症状は、長年にわたるカドミウムへの曝露に起因し、特にカドミウム汚染地域で育った作物の摂取が影響します。

初期症状には多尿や頻尿、口渇があり、進行すると歩行の際の下肢の骨痛や、呼吸時の肋間痛、さらには運動痛が現れます。最終的には骨が異常に脆くなり、軽微な動作でも骨折を引き起こすことがあります。また、腎機能も低下し、最終的には腎不全を導くことがあるため、命にも関わる深刻な健康問題です。特に、患者は主に出産経験のある中高年の女性で、多くが農作業に従事していました。

農地への影響

カドミウムは神岡鉱山からの廃水によって神通川水系を通じて流入し、土壌に蓄積されました。1971年から1974年にかけて行われた県の調査によれば、汚染面積は3,128ヘクタールに及び、1,500ヘクタールが対策地域として指定されました。この地域で育てられた米や野菜には高濃度のカドミウムが含まれ、健康被害を受けた農家は多くの問題に直面しました。政府はこの農地での作付けを制限したり、農作物を全て買い上げ、工業用の原材料として利用するような措置をとりました。

原因究明

イタイイタイ病の原因は、1955年に地元医師がカドミウムの影響を指摘したことから始まりました。後の調査で、神岡鉱山から流出した廃水にカドミウムが含まれていることが確認されました。長い間、カドミウムの毒性は正しく理解されておらず、初期の段階では他の健康要因が疑われましたが、最終的にはカドミウムが疾病の主因と認定されました。

裁判および補償

1968年には、患者や遺族が三井金属鉱業に対して訴訟を起こしました。最初の判決では原告側が勝ち、1972年の控訴審でも原告の立場が確認されました。その後も争いが続き、最終的に三井金属鉱業は補償や公害防止策に合意することになりました。

まとめ

イタイイタイ病は、環境問題の象徴ともいえるケースであり、現在も患者の認定や救済に向けた課題が残ります。特に公害病の認定は厳しい基準が敷かれており、多くの被害者が適切な支援を受けられていない現状があります。このような事例は、環境保護や公害対策の重要性を再認識させるものであり、今後の課題として地域の健康や環境を守るための取り組みが求められています。

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