安井てつ

安井てつ（やすい てつ）は、1870年3月24日に東京で生まれ、1945年12月2日に生涯を閉じた日本の教育者です。彼女は女子教育の分野で傑出した貢献をし、新渡戸稲造と共に東京女子大学の設立に尽力しました。安井は、東京府駒込曙町（現在の東京都文京区本駒込）で、旧古河藩藩士の長女として生まれました。

教育者としての歩み

東京女子高等師範学校（現在のお茶の水女子大学）を卒業後、安井は教職の道を歩み始めます。岩手県尋常師範学校や母校で教鞭を執り、1896年には文部省の留学生としてイギリスに渡り、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学で教育学を学びました。帰国後、海老名弾正から洗礼を受けますが、母校から棄教を迫られ、タイのラーチニー女学校に転出しました。その後、ウェールズ大学でも学び、帰国後は学習院や津田梅子の女子英学塾で教鞭をとりました。また、女性教養誌『新女界』（1909年創刊）では主筆を務めるなど、執筆活動にも力を注ぎました。

東京女子大学の創立と発展

安井の教育者としての最大の功績の一つは、新渡戸稲造と共に東京女子大学の設立に携わったことです。1918年、新渡戸の要請により設立に参加し、1923年には新渡戸の後を継いで二代目学長に就任しました。1940年まで学長を務め、大学の発展に大きく貢献しました。彼女の指導の下、多くの女性が社会で活躍するための教育を受けました。

人物像

安井てつは、教育者としての情熱だけでなく、人としての魅力も持ち合わせていました。教え子には二階堂トクヨや青山なをなどがおり、彼女の教育は多くの人々に影響を与えました。弟の安井勉は、安井てつにとって新渡戸稲造がクリスチャンの同志であり、また片思いの相手でもあったと語っています。安井には子供がいなかったため、甥の安井達彌が台湾から進学のために東京に来た際、東京女子大学内の自宅に引き取り、数年間世話をしたというエピソードも残っています。晩年には、1943年から東洋英和高等女学校（現在の東洋英和女学院中学部・高等部）で校長事務取扱を務めました。

晩年と死

1945年、安井は電車での通勤中に転倒し脚を骨折しました。その年の12月2日、76歳でその生涯を閉じました。彼女の死は、教育界にとって大きな損失であり、多くの人々がその功績を偲びました。

著作と関連文献

安井てつは、教育者としての活動の傍ら、著作活動にも取り組みました。

『久堅町にて』 警醒社、1915年6月 / 大空社〈叢書女性論〉、1995年6月、ISBN 4756800203
『若き日のあと : 安井てつ書簡集』 青山なを編、安井先生歿後二十年記念出版刊行会、1965年11月

彼女の生涯や業績に関する関連文献も多数出版されています。

青山なを著 『安井てつ伝』 東京女子大学同窓会、1949年6月 / 大空社〈伝記叢書〉、1990年4月、ISBN 4872363809
青山なを編 『安井てつ先生追想録』 安井てつ先生記念出版刊行会、1966年8月
* 青山なを著 『青山なを著作集 第三巻 安井てつと東京女子大学』 慶応通信、1982年11月、ISBN 4766402715

安井てつの生涯は、教育への情熱と女性の地位向上への強い意志に満ち溢れていました。彼女の業績は、今日の女子教育の発展に大きな影響を与えており、その功績は後世に語り継がれています。

もう一度検索