安否情報
安否情報とは、大規模な災害が発生した際に、放送局がテレビやラジオを通じて被災者の安否に関する情報を放送する報道特別番組や、その内容の一部を指します。通信インフラが寸断されやすい被災地において、外部と連絡を取り合うための重要な手段として機能します。
放送される安否情報は、主に以下のような形式で構成されます。
「○○（情報を依頼した人の居住地）の××（依頼者氏名）さんから、△△（情報の相手の居住地）の□□（相手氏名）さんへ。（依頼者が伝えたいメッセージ）」
メッセージの例としては、「無事なので連絡をください」「あなたの事を心配しています、連絡をください」などが挙げられます。これらの情報は、文字表示やアナウンスによって繰り返し伝えられます。電子番組ガイドでは「ニュース・報道」に分類されるのが一般的です。
日本における安否情報放送の始まりは、1964年の新潟地震まで遡るとされています。この災害の際、日本放送協会（NHK）が福島県会津地方からの修学旅行生の無事を伝えるため、引率教員の依頼を受けてラジオで放送したことが起源とされています。
NHKでは、専門のコールセンターで被災者からの無事情報や、全国各地からの安否確認依頼を受け付けています。これらの情報は、東京と大阪にある専用サーバーに集約され、放送や提携サイトでの利用に回されます。放送は主にNHK教育テレビジョン（Eテレ）やNHK-FM放送で行われ、アナウンサーが読み上げる形式です。2004年の新潟県中越地震以降は、EテレやNHK BS1のデータ放送でも一部の情報が配信され、検索できるようになりました。なお、NHKの放送やデータ放送で紹介されるのは、コールセンターに直接寄せられた情報に限られ、提携サイト経由の情報は正確性が担保できないため扱われません。
民間放送局でも、災害時の安否情報放送に関する取り組みが見られます。例えば、ニッポン放送では大規模地震対策特別措置法制定を契機に、1978年から安否情報放送の規定を設け、毎年9月1日に訓練のための模擬放送を行っています。首都圏で大規模災害が発生し、災害特別放送に移行した際には、企業ビル単位の「お勤め先安否情報」や、1981年からは学校単位の「学校安否情報」などを放送する体制をとっています。
1995年の阪神・淡路大震災（兵庫県南部地震）では、NHKが教育テレビとFM放送を使い、被災地内外の家族・親族間の情報伝達手段として、発生直後から長時間にわたり放送を実施しました。教育テレビでは合計約159時間、FMでは合計約126時間半もの放送時間となりました。特に被災地の関西地方向けには、連続で136時間（約5日半）にわたって断続的に放送が行われました。通常は定時編成を行う教育テレビが、数日間にわたる定時放送の休止・差し替えを行うのは異例のことでした。この災害で受け付けられた無事情報と安否確認依頼は、累計で5万件を超えました。
2004年10月の新潟県中越地震では、NHKが教育テレビとFM放送で安否情報を放送しました。発生当日の19時15分から放送が開始され、アナウンサーが約15分おきに交代しながら、翌日午前1時まで連続で約29時間40分放送しました。その後も通常編成を大幅に変更して継続され、教育テレビで合計約40時間15分、FMで合計約48時間45分放送されました。受け付けは累計1万7千件以上に及びました。また、この災害では地上デジタル放送・BSデジタル放送のデータ放送でも安否情報が提供されましたが、寄せられる情報が膨大だったため、更新が滞る状況も発生しました。
2011年3月の東日本大震災では、NHKがEテレ、FM放送に加えBS2でも安否情報を放送しました。発生当日の18時頃から情報の受け付けが始まり、18時45分から各波で約52時間46分にわたり放送されました。3月14日以降は、避難者名簿の公開・放送も始まり、安否情報放送は18日で終了しました。放送は1回あたり40分間で、担当アナウンサーは2人体制となるなど、放送形態にも工夫が見られました。避難者名簿の紹介や外国語による安否情報放送なども行われました。地震発生後1ヶ月間に受け付けられた情報は累計約3万1千件に達しましたが、そのうち放送できたのは約1万件でした。
安否情報放送システムには、いくつかの課題も存在します。
情報の偏り: 被災者からの無事情報よりも、被災者への安否確認依頼が多く寄せられる傾向があります。
待ち時間の問題: 目的の人物の情報がいつ放送されるか分からないため、放送を視聴し続ける必要があり、非効率となる場合があります。
データ放送の利用: データ放送での検索も可能ですが、その利用方法が分からない人も少なくありません。
情報量の限界: 放送時間やデータ放送の容量には制限があり、全ての情報を紹介しきれないことがあります。過去には、受け付けた情報の大部分を放送できなかった事例も報告されています。
初動対応の難しさ: 広域災害では、コールセンターが設置されている地域の交通機関も停止し、初動時に十分なスタッフを確保するのが困難な場合があります。
また、過去の災害時には以下のような個別事例も発生しました。
新潟県中越地震では、実在しない人物や悪戯目的の情報が混入しました。
消防署員を装った人物が、放送された安否情報に登場する女性を狙った特殊詐欺未遂事件が発生しました。
通信規制などにより、被災地内外からコールセンターへの電話が繋がりにくい状況が見られました。
一部の避難所に設置された「携帯電話を利用した安否伝言ポスト」は、説明不足や無人運用のため、利用が限定的でした。
これらの課題に対し、GoogleパーソンファインダーやJ-anpiのようなインターネットを活用した安否確認システムなども登場しており、多様な手段での情報共有が図られています。また、戦後混乱期には、NHKラジオで復員者や引き揚げ者の消息を確認する「尋ね人の時間」という類似の番組が存在しました。
概要
放送される安否情報は、主に以下のような形式で構成されます。
「○○（情報を依頼した人の居住地）の××（依頼者氏名）さんから、△△（情報の相手の居住地）の□□（相手氏名）さんへ。（依頼者が伝えたいメッセージ）」
メッセージの例としては、「無事なので連絡をください」「あなたの事を心配しています、連絡をください」などが挙げられます。これらの情報は、文字表示やアナウンスによって繰り返し伝えられます。電子番組ガイドでは「ニュース・報道」に分類されるのが一般的です。
歴史
日本における安否情報放送の始まりは、1964年の新潟地震まで遡るとされています。この災害の際、日本放送協会（NHK）が福島県会津地方からの修学旅行生の無事を伝えるため、引率教員の依頼を受けてラジオで放送したことが起源とされています。
主な提供者
NHK
NHKでは、専門のコールセンターで被災者からの無事情報や、全国各地からの安否確認依頼を受け付けています。これらの情報は、東京と大阪にある専用サーバーに集約され、放送や提携サイトでの利用に回されます。放送は主にNHK教育テレビジョン（Eテレ）やNHK-FM放送で行われ、アナウンサーが読み上げる形式です。2004年の新潟県中越地震以降は、EテレやNHK BS1のデータ放送でも一部の情報が配信され、検索できるようになりました。なお、NHKの放送やデータ放送で紹介されるのは、コールセンターに直接寄せられた情報に限られ、提携サイト経由の情報は正確性が担保できないため扱われません。
民間放送
民間放送局でも、災害時の安否情報放送に関する取り組みが見られます。例えば、ニッポン放送では大規模地震対策特別措置法制定を契機に、1978年から安否情報放送の規定を設け、毎年9月1日に訓練のための模擬放送を行っています。首都圏で大規模災害が発生し、災害特別放送に移行した際には、企業ビル単位の「お勤め先安否情報」や、1981年からは学校単位の「学校安否情報」などを放送する体制をとっています。
大規模災害での対応事例
阪神・淡路大震災 (1995年)
1995年の阪神・淡路大震災（兵庫県南部地震）では、NHKが教育テレビとFM放送を使い、被災地内外の家族・親族間の情報伝達手段として、発生直後から長時間にわたり放送を実施しました。教育テレビでは合計約159時間、FMでは合計約126時間半もの放送時間となりました。特に被災地の関西地方向けには、連続で136時間（約5日半）にわたって断続的に放送が行われました。通常は定時編成を行う教育テレビが、数日間にわたる定時放送の休止・差し替えを行うのは異例のことでした。この災害で受け付けられた無事情報と安否確認依頼は、累計で5万件を超えました。
新潟県中越地震 (2004年)
2004年10月の新潟県中越地震では、NHKが教育テレビとFM放送で安否情報を放送しました。発生当日の19時15分から放送が開始され、アナウンサーが約15分おきに交代しながら、翌日午前1時まで連続で約29時間40分放送しました。その後も通常編成を大幅に変更して継続され、教育テレビで合計約40時間15分、FMで合計約48時間45分放送されました。受け付けは累計1万7千件以上に及びました。また、この災害では地上デジタル放送・BSデジタル放送のデータ放送でも安否情報が提供されましたが、寄せられる情報が膨大だったため、更新が滞る状況も発生しました。
東日本大震災 (2011年)
2011年3月の東日本大震災では、NHKがEテレ、FM放送に加えBS2でも安否情報を放送しました。発生当日の18時頃から情報の受け付けが始まり、18時45分から各波で約52時間46分にわたり放送されました。3月14日以降は、避難者名簿の公開・放送も始まり、安否情報放送は18日で終了しました。放送は1回あたり40分間で、担当アナウンサーは2人体制となるなど、放送形態にも工夫が見られました。避難者名簿の紹介や外国語による安否情報放送なども行われました。地震発生後1ヶ月間に受け付けられた情報は累計約3万1千件に達しましたが、そのうち放送できたのは約1万件でした。
課題
安否情報放送システムには、いくつかの課題も存在します。
情報の偏り: 被災者からの無事情報よりも、被災者への安否確認依頼が多く寄せられる傾向があります。
待ち時間の問題: 目的の人物の情報がいつ放送されるか分からないため、放送を視聴し続ける必要があり、非効率となる場合があります。
データ放送の利用: データ放送での検索も可能ですが、その利用方法が分からない人も少なくありません。
情報量の限界: 放送時間やデータ放送の容量には制限があり、全ての情報を紹介しきれないことがあります。過去には、受け付けた情報の大部分を放送できなかった事例も報告されています。
初動対応の難しさ: 広域災害では、コールセンターが設置されている地域の交通機関も停止し、初動時に十分なスタッフを確保するのが困難な場合があります。
また、過去の災害時には以下のような個別事例も発生しました。
新潟県中越地震では、実在しない人物や悪戯目的の情報が混入しました。
消防署員を装った人物が、放送された安否情報に登場する女性を狙った特殊詐欺未遂事件が発生しました。
通信規制などにより、被災地内外からコールセンターへの電話が繋がりにくい状況が見られました。
一部の避難所に設置された「携帯電話を利用した安否伝言ポスト」は、説明不足や無人運用のため、利用が限定的でした。
これらの課題に対し、GoogleパーソンファインダーやJ-anpiのようなインターネットを活用した安否確認システムなども登場しており、多様な手段での情報共有が図られています。また、戦後混乱期には、NHKラジオで復員者や引き揚げ者の消息を確認する「尋ね人の時間」という類似の番組が存在しました。
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