安寿と厨子王丸

安寿と厨子王丸

「安寿と厨子王丸」は、日本の伝説的な童話であり、姉弟の悲劇的な運命が描かれています。この物語は『安寿と厨子王』としても知られており、長い歴史を持ち、多くの人々に語り継がれてきました。

由来

この物語の基本的なストーリーは、中世に成立した説経節『さんせう太夫』を基にしており、浄瑠璃やその他の演目で演じられてきたものを、子供向けにアレンジした形で伝わっています。地域によっては民話としても受け入れられ、近世には絵本などのかたちで児童文学としても親しまれました。

あらすじ

物語は、太守である岩城判官正氏が讒言によって筑紫に流されてしまった家族の運命から始まります。彼の妻と二人の子供である姉・安寿姫と弟・厨子王は、正氏を探し求めて越後の直江津までたどり着きますが、人買いの山岡太夫に捕らえられてしまいます。安寿と厨子王はそれぞれ異なった人買いの下に売られ、山椒大夫の元で酷使されることになります。与えられた過酷な労働に苦しむ中、姉弟は何とか逃げる機会をうかがいます。

ある日、安寿は弟を密かに逃がそうと試みますが、彼女は罰として焼け火箸を額に当てられます。しかし、彼女が大切にしていた地蔵尊のおかげで傷は残りませんでした。安寿は厨子王に逃亡を勧め、弟は姉との再会を約束しながら去ります。しかし、安寿は残された後に自ら命を絶ち、彼女の遺体は村人たちによって葬られました。このとき彼女は16歳、厨子王は13歳でした。

一方、厨子王は逃げ延びて丹後の国分寺にたどり着き、寺の僧侶に助けられます。町に戻った厨子王は、朝廷に正氏の赦免を訴えることで、家族の悲劇を終わらせることに成功します。さらに、安寿姫の霊は厨子王を守り、彼の運命をかえていくのです。

歴史的背景

物語に登場する安寿と厨子王は、歴史上実在した人物ではなく、架空の存在です。物語の背景には、当時の権力者や貴族の没落した運命が反映されています。この物語の成り立ちは、権力の陰で苦しむ人々の姿を描くことによって、聞く者に強い印象を与えようとしたものであると言われています。特に、人買いが登場することを通じて、当時の社会の正義と不正を見つめ直す視点が表現されています。

伝承地

物語は、特に東北地方で数多くの伝承があります。岩木山には安寿姫が祀られる場所もあり、彼女の怨霊や伝説は地域社会に深く影響を与えています。また、故事にちなんで丹後の人々が避けられるような風潮も見られ、その影響は江戸時代末期まで続いていました。

このように、「安寿と厨子王丸」は、日本の童話としての地位を確立しており、その教訓や伝説は今なお多くの人々に愛され続けています。

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