安布知神社

安布知神社の由緒と歴史

安布知神社（あふちじんじゃ）は、長野県下伊那郡阿智村駒場に位置する神社です。かつては郷社として地域の人々に崇敬されていました。この神社は、八意思兼命（やごころおもいかねのみこと）、譽田別命（ほむたわけのみこと）、須佐之男命（すさのおのみこと）の三柱を祭神として祀っています。

古代からの歴史

社伝によれば、神社の創建は368年（仁徳天皇56年）に遡ります。清坂に八意思兼命の霊代として八華鏡を祀り、「吾道大神宮」として創建されたと伝えられています。数キロメートル離れた場所にある阿智神社とは、古代から深い繋がりがあったとされています。鎮座地は、古代東山道の「阿知駅」跡とされる場所を見下ろす斜面に位置しており、交通の要所であったことがうかがえます。

706年（慶雲3年）には八幡神（譽田別命）が合祀され、「よさか八幡」とも呼ばれるようになりました。その後、1573年（天正元年）に領主小笠原氏が近江国三井寺から新羅明神（須佐之男命）を勧請し、新羅明神社と改称しました。徳川家光からは新羅明神の名で朱印地10石が寄進され、将軍が代わるたびに朱印状が交付されました。

近世以降の変遷

現在の社殿は、1671年（寛文11年）に領主宮崎氏によって再建されたものです。本殿は覆屋の中にあり、三間社流造という様式で建てられています。拝殿は1675年（延宝3年）に当時の神主、林氏によって建立されました。拝殿の天井には、中央に雲龍図、周囲には虎、竜、鯉など144点の格天井絵が描かれており、その美しさは見る者を魅了します。1690年（元禄3年）には、参道入口に石の大鳥居が建立されました。

一時期、境内には真言宗神光寺が建てられていましたが、後に廃寺となり、仏像は長岳寺に移されました。1872年（明治5年）には安布知神社と改称され、駒場村の村社となりました。1932年（昭和7年）には郷社に昇格しました。2015年（平成27年）には、本殿と拝殿が長野県の県宝に指定されました。また、社宝である八華鏡は、京都国立博物館の専門家によって、奈良時代の唐式鏡「花禽双鸞八花鏡」であると鑑定されました。

境内の見どころ

境内には、樹齢を重ねたヒイラギとサカキの古木があり、それぞれ1968年（昭和43年）に阿智村の天然記念物に指定されています。また、石段の両脇には狛犬が鎮座し、境内には戦没者慰霊碑や手水舎も設けられています。

現地情報

• - 所在地：長野県下伊那郡阿智村駒場2079
• - 交通アクセス：中央自動車道 飯田山本インターチェンジから車で約7分（約4.2km）

参考文献

• - 『阿智村誌』、阿智村誌編集委員会、阿智村誌刊行委員会発行、1984年（昭和59年）
• - 『東山道の峠の祭祀』、市澤英利著、新泉社発行、2008年（平成20年）

安布知神社は、その長い歴史と美しい社殿、境内の自然が調和した、訪れる価値のある神社です。

もう一度検索