新羅明神

新羅明神について

新羅明神（しんらみょうじん）は、滋賀県大津市にある園城寺（おんじょうじ、通称：三井寺）の守護神として深く信仰されている神です。その名の通り、新羅との関わりが示唆されていますが、その起源や性格については複数の説が存在します。

伝承

新羅明神は、智証大師（ちしょうだいし）円珍（えんちん）が唐（中国）から帰国する際、乗船していた船の舳先に現れたと伝えられています。この時、明神は自らを新羅国の明神であると名乗ったとされています。この出来事が、園城寺に新羅明神が祀られるようになったきっかけとされています。

起源に関する諸説

新羅明神の起源については、以下のような説が提唱されています。

1. 中国山東省起源説：
新羅明神は元々、中国の山東省で祀られていた神であるとする説です。この説は、新羅が中国文化の影響を強く受けていたこと、また、古代の東アジアにおける海上交通のつながりを背景としています。

2. 朝鮮半島渡来説：
新羅明神は、朝鮮半島から日本に渡来した神であるとする説です。この説は、新羅と日本との間の交流があったこと、また、新羅の宗教観が日本に影響を与えた可能性を示唆しています。

3. 地主神説：
新羅明神は、園城寺の場所に元々祀られていた地主神であるとする説です。この説は、特定の地域に根付いた神が、後に仏教寺院の守護神として取り込まれるという、日本における神仏習合の一例を示しています。

新羅明神と園城寺

新羅明神は、園城寺において非常に重要な位置を占めており、寺の守護神として、また、人々の信仰対象として敬われています。園城寺には、新羅明神を祀る社殿があり、現在でも多くの参拝者が訪れています。

新羅明神坐像（国宝）

園城寺には、新羅明神を象った「新羅明神坐像」（平安時代、国宝）が所蔵されています。この坐像は、神像としては珍しく、優美で写実的な表現が特徴で、当時の彫刻技術の高さを物語っています。新羅明神の姿を具体的に知ることができる貴重な作品です。

関連する美術品

新羅明神に関連する作品としては、ボストン美術館が所蔵する「弥勒如来二侍者像」があります。この作品は鎌倉時代の作であり、新羅明神と直接的な関連はないものの、仏教美術の流れの中で、当時の信仰観を窺い知る上で重要な作品です。

参考文献

出羽弘明『新羅の神々と古代日本―新羅神社の語る世界』同成社、2004年5月1日。
亀田孜『日本仏教美術史叙説』学芸書林、1970年1月1日。

関連項目

山王権現：
日本の神仏習合における代表的な神であり、新羅明神もまた、その一部として捉えられることがあります。

七面天女：
法華経を守護する女神であり、新羅明神と並んで、仏教における守護神として信仰を集めていました。

* 源義光：
平安時代後期の武将で、新羅明神前で元服したため「新羅三郎義光」と称しました。このことから、当時の武士たちの間で新羅明神が信仰されていたことが伺えます。

もう一度検索