安息の地を求めて

エリック・クラプトン『安息の地を求めて』（There's One in Every Crowd）

1975年にリリースされたエリック・クラプトンのアルバム『安息の地を求めて』（原題：There's One in Every Crowd）は、前作『461 オーシャン・ブールヴァード』とその収録曲として大ヒットしたシングル「アイ・ショット・ザ・シェリフ」が世界的に成功を収めた直後に発表されました。この時期、クラプトンはレゲエへの強い関心を音楽に積極的に取り入れており、本作はその流れをさらに推し進めた作品と言えます。

アルバムの制作は、そのレゲエ志向を反映して、主にジャマイカの地で行われました。カリブ海の開放的な雰囲気と現地の音楽的な影響が、作品全体のサウンドに深く根ざしています。ただし、収録曲の一つである「オポジット」は、ジャマイカではなくアメリカのマイアミで録音されています。

収録曲の中には、古くから歌い継がれる黒人霊歌をモチーフにしたものが含まれています。例えば、「揺れるチャリオット」（Swing Low, Sweet Chariot）は、伝統的なメロディにレゲエのリズムとアレンジが施されており、このアルバムの音楽的多様性を示す一例となっています。他にもブルースやロックンロールのエッセンスも含まれており、レゲエ一辺倒ではなく、クラプトンらしい幅広い音楽性が展開されています。

本作のレコーディングが完了した後、エリック・クラプトンはキャリアにおいて重要な一歩を踏み出します。1974年10月31日、彼は初めて日本の土を踏み、記念すべき初の日本公演を行いました。この公演は、日本の音楽ファンにとって長らく待ち望まれていたものであり、本作のリリースに先駆けて日本のファンにクラプトンの最新のサウンドを届ける機会となりました。

アルバムには以下の10曲が収録されています。

収録曲

Side 1
1. ジーザス・カミング・スーン (We've Been Told) - Traditional
2. 揺れるチャリオット (Swing Low, Sweet Chariot) - Traditional
3. 小さなレイチェル (Little Rachel) - Jim Byfield
4. ドント・ブレイム・ミー (Don't Blame Me) - Eric Clapton, George Terry
5. ザ・スカイ・イズ・クライング (The Sky Is Crying) - Elmore James

Side 2
1. ブルースを唄って (Singin' the Blues) - Mary McCreary
2. メイク・イット・スルー・トゥデイ (Better Make It Through Today) - Eric Clapton
3. 可愛いブルー・アイズ (Pretty Blue Eyes) - Eric Clapton
4. 心の平静 (High) - Eric Clapton
5. オポジット (Opposites) - Eric Clapton

参加ミュージシャン

本作の制作には、クラプトンを支えるバンドメンバーが参加しています。

Eric Clapton: リード・ヴォーカル、エレクトリックギター、アコースティックギター、ドブロ
George Terry: エレクトリックギター、アコースティックギター、グループ・ヴォーカル
Jamie Oldaker: ドラムス、パーカッション
Dick Sims: オルガン、ピアノ、エレクトリックピアノ
Carl Radle: エレクトリックベース、エレクトリックギター
Yvonne Elliman: リード・ヴォーカル、グループ・ヴォーカル
* Marcy Levy: グループ・ヴォーカル

『安息の地を求めて』は、前作の成功から生まれた勢いに乗りつつも、レゲエという新しい音楽ジャンルへの探求を深めた、当時のクラプトンの音楽的な方向性を示す重要なアルバムと言えるでしょう。ジャマイカでのレコーディング体験や、それに続く初の日本公演といった出来事も、この時期の彼のキャリアを彩る要素となっています。

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