安息年

安息年（シェミッター）

安息年（ヘブライ語でשְׁמִטָּה, `šəmitt‘āh` シェミッター。「負債の免除」または「解放」を意味する）は、ユダヤ教の律法（トーラー）に基づき、古代イスラエル王国およびユダヤ王国で実践されていた独特の周期的な習慣です。これは7年を一つの周期とし、その最終年に特別な規定が適用されるものです。主要な規定は、土地の利用制限と経済的な免除に焦点を当てています。

土地の休息

安息年の最も重要な規定の一つは、土地の耕作を完全に休止することです。この一年間、畑に種を蒔いたり、ブドウ園を剪定したりといった農作業は禁じられます。土地を強制的に休ませることにより、疲弊した土地を回復させると共に、神への信頼を示す機会とされました。この期間に自然に生じた産物（例えば、前年の種が落ちて自生した作物や、剪定されていないブドウの房など）については、収穫する者が独占せず、貧しい人々や寄留者、さらには野生動物のためにも開かれたものとされました。これは、土地の所有権に対する考え方を超え、神がすべての生命の源であるという信仰に基づいています。

負債の免除

安息年には、土地の休息と並んで、経済的な側面での重要な規定があります。それは、ユダヤ人同士の間で生じた負債が免除されるということです。この年の終わりに、債権者はユダヤ人の債務者に対する貸付金の返済を請求することができなくなります。この規定は、貧困に苦しむ人々を救済し、経済的な格差を是正する目的があったと考えられています。ただし、現代における負債の扱いについては、様々な解釈や対応が存在します。

聖書およびラビ文学における記述

安息年に関する規定は、トーラーの複数の箇所に記されています。主な出典としては、出エジプト記（23:10-11）、レビ記（25:1-7）、申命記（31:10-13）などがあります。これらの箇所では、土地の休止や負債の免除、そして安息年の規定を守ることの意義について述べられています。また、歴代誌第二（36:20-21）では、イスラエルの民が安息年の規定を守らなかったことに対する罰として、バビロン捕囚がもたらされたと示唆されています。

後代のユダヤ教において、これらの聖書の規定をどのように解釈し、実践するかについては、ラビたちによって詳細に議論されました。特に、ミシュナー（古代ユダヤの口伝律法を集成したもの）の「ゼラーイーム」（種子に関する律法）という部分にあるトラクタート「シェビーイート」（第七年）は、安息年に関する広範な規定と解釈を扱っています。

現代における実践

安息年の規定は、歴史的に古代イスラエルに適用されるべきものとされてきました。今日では、多くのユダヤ人コミュニティにおいて、その文字通りの実践は行われていません。しかし、特にイスラエルの地に住む正統派ユダヤ教徒の間では、聖書の規定を守る試みが続けられています。ただし、現代の経済システムや農業形態の中で文字通りに実践することは困難であるため、様々な儀式的な方法が考案されています。例えば、安息年中は土地を非ユダヤ人に一時的に売却したという形式を取る、といった対応がなされることがあります。また、負債の免除についても、現代の金融システムに合わせた解釈や手続きが存在します。

関連事項

安息年は、7年周期の概念に基づいています。この「7」という数字は、創造の物語における第七日目の安息日（シャッバート）や、7つの安息年が過ぎた後の50年目にあたる「ヨベルの年」（Jubilee）など、ユダヤ教において重要な意味を持つ数字です。安息年とヨベルの年は、共に土地の休息や解放、自由といったテーマを共有しています。シャッバートが週ごとの休息であるのに対し、安息年は年ごとの休息、そしてヨベルの年は世代ごとの大規模な解放と位置づけられます。

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