申命記

申命記の概要

『申命記』は旧約聖書に含まれる書であり、モーセ五書の一部として第5番目に位置づけられています。この書はヘブライ語の「デヴァリーム（devarim）」に由来し、意味は「言葉」です。また、七十人訳聖書やウルガータ聖書では「第二の律法」という意味の名前がつけられています。これは、律法の写しが「第二」と誤解される経緯から来ているのです。日本語の「申命記」は、繰り返し命じるという意味を持つ漢語から来た名称を反映しています。

内容

『申命記』の内容は、モーセが死を前にしてモアブの荒れ野で民に語ったという伝承に基づいています。三つの主な説話から構成されています。

• - 第一の説話（1章 - 4章）: モーセが40年間の荒れ野の旅を振り返り、神への忠実さを強調します。
• - 第二の説話（5章 - 26章）: ここでは十戒が繰り返し教育され、後半では律法が与えられています。
• - 第三の説話（27章 - 30章）: 神と律法への従順、神とイスラエルの契約の確認が行われ、従順な者には報いが与えられ、不従順な者には罰が語られます。

この説話の後、モーセは死に備え、ヨシュアを後継者として指名します。続いて、モーセの歌や部族への祝福が記され、最後にはモーセの死と埋葬についての記述が綴られます。

著者について

『申命記』の著者については諸説あり、特定の記述は存在しません。古代の伝承ではモーセによる著作とされていましたが、モーセ自らの死をどう描写したのかという疑問が生じます。一部のラビは、モーセが予言的に執筆したと考えますが、大部分はヨシュアが関連部分を書いたとする見解を持っています。

中世に入ると、12世紀の学者アブラハム・イブン・エズラが『申命記』の文体に注目し、異なる著者がいる可能性を示唆しました。15世紀にはドン・アイサック・アブラヴァネルが別の著者によるものであるとする意見を展開しました。

近代の解釈

19世紀に入ると、旧約聖書に関する研究が進展し、特にヨシヤ王時代の宗教改革と『申命記』との関連についての説が提唱されました。紀元前621年、ヨシヤ王が聖所から偶像崇拝を排除し、律法の書が発見された出来事がその中心です。この書が『申命記』であると考えられています。

ヨシヤ王と大祭司ヒルキヤの意図があり、彼らは政治的利害を考慮に入れた新たな文書を作成したとする研究もあります。また、近代の研究者たちは『申命記』の著作時期を紀元前7世紀に特定し、その文体がこの時代の条約文形式に影響を受けたと考えます。ただし、保守的見解ではその時期に限定される必要はないとする意見も存在します。

現代においては、ユダヤ教正統派やキリスト教福音派の多くが『申命記』の著者はモーセであり、失われた書が再発見されたという見解を維持しています。教義や解釈の違いを越え、この書の意義は今もなお語られ続けています。

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