歴代誌

『歴代誌』は、旧約[[聖書]]に収められているユダヤの歴史書であり、上下2巻で構成されています。この書は、日本語訳では「歴代志」「歴代史」「歴代の書」「歴代誌略」などと様々な名称で呼ばれることがあります。

上巻（または第一巻）は、ダビデ王の死までが記述されており、下巻（または第二巻）ではバビロン捕囚までの出来事が描かれています。内容の一部は、『サムエル記』や『列王記』と重複していますが、『歴代誌』には独自の視点や情報が含まれています。

ユダヤ教においては、『歴代誌』は「預言書」ではなく「諸書」に分類されています。一方、キリスト教では『列王記』と並ぶ歴史書として扱われ、聖書の後半に位置づけられています。ラテン語名「Chronica」は、ヒエロニムスが初めて使用したものです。ギリシア語聖書では、『パレレイポメナ（省略されたもの）』というタイトルで、他の歴史書の補足的な意味合いを持たせています。

伝統的に、『歴代誌』の著者はエズラであると伝えられています。しかし、文体や記述法が『エズラ記』や『ネヘミヤ記』と類似しているため、批評学的にはこれらも同じ著者グループによるものだと考えられています。

内容としては、『サムエル記』や『列王記』を参考にしながらも、独自の資料を基にイスラエルの歴史を再構成しています。特に、神殿に関する詳細な記述や、職制の人名リストが多いことが特徴的です。また、北イスラエル王国の歴史が完全に無視されている点も注目に値します。

『歴代誌』の内容構成

『歴代誌』は、大きく分けて以下の内容で構成されています。

イスラエルの諸部族の系図（上1章～9章）
アダムからアブラハムに至る系図やエドムの王、ヤコブの子孫、ダビデの子孫、ユダの子孫、ルベン、ガド、マナセ、レビの子孫、レビの一族と居住地、イサカル、ベニヤミン、ナフタリ、マナセ、エフライム、アシェルの子孫、ベニヤミンの子孫、バビロン捕囚後にエルサレムに住んだ人々など、詳細な系図が記録されています。

ダビデの治世（上10章～29章）
サウルの死、ダビデ王の即位、ダビデの家臣団、ダビデと神の箱、ダビデ王の勢力拡大、神の箱の移動、神の箱の前での儀式、ナタンの予言とダビデの祈り、ダビデの戦果、アンモン人やアラム人との戦い、ダビデの人口調査、神殿建設準備、レビ人の任務、祭司の組織、詠唱者や門衛のリスト、軍隊の組織と財産管理、ダビデの神殿建築に関する指示、ダビデの祈りとソロモン王の即位などが記述されています。

ソロモン王の治世（下1章～9章）
ソロモンの知恵、神殿の建築、ソロモンの事業、シェバの女王訪問とソロモンの富などが詳細に描かれています。

王国の分裂（下10章）
王国が南北に分裂する出来事が記述されています。

捕囚に至る南ユダ王国の歴史（下11章～36章）
ユダ王国の歴代の王の治世、エジプトの攻撃、預言者の活動、神殿の改革、過越祭、センナケリブの攻撃、バビロン捕囚など、南ユダ王国の歴史が詳細に描かれています。

『歴代誌』は、単なる歴史記録ではなく、神の民であるイスラエルの歴史を神の視点から再解釈した書物と言えるでしょう。神殿や祭儀に関する記述が詳細なのは、神の民としてのアイデンティティを再確認し、神との契約を再認識するためであったと考えられます。また、北イスラエル王国に関する記述を省略しているのは、南ユダ王国を中心に据え、神殿を中心とした信仰を重視するためであったと考えられています。

脚注

関連人物
エズラ

関連事項
古代イスラエル

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