安房口神社

安房口神社：歴史と神秘に包まれた霊石の社

神奈川県横須賀市吉井の明神山山頂に鎮座する安房口神社は、その歴史と独特の形態から、多くの注目を集める神社です。他の神社とは異なる、霊石を神体とする特殊な様式が特徴となっています。

神体とされる霊石の伝承

この神社のシンボルである霊石は、千葉県に鎮座する安房神社の祭神、天太玉命の霊代と伝えられています。東国鎮護のために安房国から吉井明神山山頂へと飛来したとされるこの巨石は、その面が安房国の方角を向いていることから、古くから「安房口明神」と尊称されてきました。

社伝によれば、日本武尊が東征の際にこの霊石を拝し、東夷征討の成就を祈願したとされています。この伝承は、神社の古い歴史と、武尊による信仰の深さを物語っています。

古道と鎌倉幕府との関わり

湘南山手開発以前、安房口神社の山麓には古東海道の一つが通っていたと言われています。鎌倉幕府は、重要な出来事の際には、当地の郡主である三浦義澄を代拝として派遣し、奉幣祈願を行っていたという記録が残されています。この事実から、安房口神社が鎌倉幕府においても重要な役割を果たしていたことが窺えます。

創建と神社の形態

創建時期は明確には分かっていませんが、『神社明細帳』には治承3年（1179年）と記されています。巨石を神体とし、社殿を持たないその形態は、神社建築史においても非常に原始的なものと言えるでしょう。社殿を設けないこのスタイルは、古代の信仰形態を現代まで色濃く残す、珍しい例となっています。そのため、古代からの鎮座は高い信頼性があるとされています。これらの事実は、安房口神社が古代の信仰を現代に伝える貴重な存在であることを示しています。

現代の安房口神社

現在、宮司は感見達也氏が務めています。多くの歴史と神秘に満ちた安房口神社は、静かにその霊威を保ち続け、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。アクセスは京急久里浜駅からバスで「安房口神社前」下車です。横須賀市立望洋小学校の近くにあります。

参考文献

神奈川県神社庁 編『神奈川県神社誌』神奈川県神社庁、1981年
感見達也 著「安房口神社」、神奈川県神社庁鎌倉横須賀三浦連合支部神社案内冊子委員会 編『鎌倉・横須賀・三浦・逗子・葉山の神社』文明堂印刷、2014年、136-137頁
『神社明細帳(三浦郡)』神奈川県図書館協会〈神奈川県郷土資料集成 第13輯〉、1998年
「衣笠庄 西浦賀分郷 安房口明神社」『大日本地誌大系』 第40巻新編相模国風土記稿5巻之113村里部三浦郡巻之7、雄山閣、1932年8月。NDLJP:1179240/156

関連リンク

安房口神社 - 叶神社公式ホームページ
神奈川県神社庁公式サイト

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