安村敏信

安村敏信氏（やすむらとし のぶ）は、1953年富山県生まれの日本美術史学者です。東北大学文学部美術史学科卒業後、同大学院修士課程を修了。1979年から2013年まで板橋区立美術館に勤務し、2005年には館長に就任しました。その後、2017年からは北斎館館長を務めています。

専門は、江戸時代の日本美術、特に狩野派の絵画です。学芸員としての経験を生かし、数々の展覧会の企画や、これまで世に知られていなかった作品の発掘にも携わってきました。その活動は、単なる研究にとどまらず、美術を広く一般に伝えることにも重点が置かれています。

安村氏は自身の活動について「萬美術屋」と称しており、その言葉からは、美術への深い愛情と、多くの人々に美術の魅力を伝えたいという強い意志が感じられます。

氏の活動は、研究論文の発表にとどまりません。一般向けに分かりやすく書かれた著書も多数出版しており、その数は多岐に渡ります。代表的な著書としては、『浮世絵に遊ぶ』『美術館商売 美術なんて･･･と思う前に』『すぐわかる画家別近世日本絵画の見かた』『絵師別江戸絵画入門 改訂改題版』『もっと知りたい狩野派 探幽と江戸狩野派』などがあります。これらを通して、江戸時代の絵画の特徴や、それぞれの画家の画風、そして絵画に込められた背景などを、一般の人にも理解しやすい言葉で解説しています。

また、共著や監修なども多数手がけており、その活動範囲は広く、日本美術史研究における貢献は非常に大きなものがあります。『江戸名作画帖全集』『幽霊名画集』『日本の幽霊名画集』『広重と歩こう東海道五十三次』『日本美人画一千年史』など、多くの書籍に携わり、日本の美術文化の普及に貢献しています。

安村氏の著作は、専門的な知識を必要とせずとも、江戸時代の絵画や美術文化に興味を持つ全ての人々にとって、大変魅力的な内容となっています。学術的な厳密さと、大衆的な分かりやすさを両立させた、氏のユニークなアプローチが、多くの人々の共感を呼び、日本美術史研究に大きな影響を与えていると言えるでしょう。

さらに、氏の活動は、単なる研究や執筆活動にとどまりません。北斎館館長としての活動を通して、葛飾北斎の作品を広く紹介し、その魅力を次世代に伝承する役割も担っています。板橋区立美術館館長としての経験も踏まえ、美術館における展示企画や運営にも造詣が深く、日本の美術文化の発展に大きく貢献しています。

安村敏信氏の今後の活動にも、大きな期待が寄せられています。

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