安楽寺 (笛吹市)

安楽寺の概要

安楽寺（あんらくじ）は、山梨県笛吹市石和町下平井に位置する真言宗智山派の寺院であり、山号は金剛山、そして本尊には聖観世音菩薩が祀られています。安楽寺は甲斐国三十三観音霊場の第25番札所として名高く、長い歴史を経て信仰を集めてきました。

立地と歴史的背景

安楽寺が所在する笛吹市石和町下平井は、甲府盆地の東部に位置し、笛吹川の左岸に広がる微高地です。この地点は、古来より氾濫を繰り返してきた笛吹川の影響を受けにくく、歴史的な考古遺跡が多数発見されています。また、奈良時代や平安時代の遺跡が残っていることから、この地の歴史的価値がうかがえます。

古代には律令制によって管理され、上平井や中川、笛吹市一宮町坪井地区を含む山梨郡玉井郷に位置していたと考えられています。中世には甲斐源氏一族である平井氏がこの地に進出し、近世には下平井村が形成されました。さらに、古代甲斐国の国府は現在の笛吹市春日居町国府一帯にあったとされ、その後期国府の所在地は「国衙」という地名が残る笛吹市御坂町国衙付近と推定されています。

安楽寺の歴史

安楽寺の創建時期は不詳ですが、江戸時代の貞享4年（1687年）には快貞によって再興され、その後は大蔵経寺の末寺として管理されるようになりました。安楽寺では、本堂や観音堂が何度か焼失し、特に明治時代の水害で古い記録が散逸してしまったものの、本尊の聖観世音菩薩は無事でした。現在も、昭和48年（1973年）に文化財に指定されています。

江戸後期の資料である『甲斐国志』によると、安楽寺の本尊は聖観音菩薩とされ、10世紀に作られた観音菩薩立像がその本尊として位置づけられています。また、安楽寺の如意輪観世音菩薩は甲斐国三十三観音霊場の重要な信仰対象となっています。

この観音菩薩の像は木造で漆箔が施され、桜の木から作られています。像高は146.8センチメートルあり、笛吹市の指定文化財に指定されています。その衣紋には典型的な翻波式が見られ、古代における観音菩薩信仰の重要な証しとして注目されています。現在、この像は2005年に開館した山梨県立博物館に収蔵されています。

伽藍と御詠歌

安楽寺の主要な建物には本堂や保管庫があります。こちらには美しい動植物や自然が溢れ、訪れる人々を魅了しています。また、安楽寺には「聞くからに 清き平井の 尽きぬ水 涼しき空に 松風の音」という御詠歌があります。この詩は、寺院の静けさや周囲の自然を称賛する内容となっています。

前後の札所

安楽寺は、甲斐国三十三観音霊場の一部として他の札所と繋がりを持っています。前の札所は清光院、次の札所は心月院です。これにより、多くの信者や観光客が巡礼する際の重要な拠点としての役割も果たしています。

結論

安楽寺は、歴史的な背景や文化財としての価値、そして地域の信仰に深く根ざした寺院です。その悠久の歴史を感じることができる場所として、多くの人々に愛されています。

もう一度検索