安永餅

安永餅（やすながもち）

安永餅は三重県桑名市を代表する名物のお菓子で、つぶ餡を包み込んだ細長く平らな焼き餅です。多くの人々に親しまれ、「ともち」や「牛の舌もち」とも呼ばれています。その起源は江戸時代に遡り、員弁川にかかる町屋橋の北側に位置する安永の街道沿いの茶屋街で誕生したとされ、旅人たちに広く愛されてきました。

安永餅の発祥については、桑名宿を往来していた旅行者や地元の人々が昔から親しんでいたことが関わっていると言われています。また、伝説によると、桑名で隠居していた松平定信（楽翁公）が、非常時の食料として考案したというエピソードもあります。 ただし、安永餅に似した形状の餅を食べる文化は桑名から四日市、鈴鹿にかけて広まっており、史料も残っていないため、正確な起源を特定することは難しいのが現状です。

元々は丸餅の形状をしていた安永餅ですが、旅人が懐に入れやすくするため、あるいは餅屋が焼きやすくするために、細長い形に変えられたという説があります。現在では「永餅屋老舗」と「安永餅本舗 柏屋」の二つの業者が製造・販売を行っています。

「永餅屋老舗」は1634年（寛永11年）に創業し、機械焼きによる大量生産体制を採用しているため、一般的な安永餅は柔らかい食感を持っています。一方で、「安永餅本舗 柏屋」は伝統的な手焼き製法を守っており、やや堅めで香ばしい焼き目が特徴的です。このため、訪れる人々はそれぞれの店舗の違いを楽しみながら好みの安永餅を選ぶことができます。

さらに、「永餅屋老舗」では、なばなの里店限定の「なばな安永餅」も製造しており、季節に応じた特別な味わいが楽しめます。また、両業者では慶事用に染められた「紅白安永餅」の予約も受け付けています。

安永餅が販売されていた場所は、現在は「料理旅館 玉喜亭」として活用されています。ここには「安永餅の郷博物館」が整備されており、館内では1818年（文政元年）に築かれた建物やかまど、木戸、藤棚などの歴史的な構造物が保存されています。見学希望者は事前予約が必要です。

また、安永餅にはユニークなコマーシャルソングが存在し、その音源は「永餅屋老舗」の公式ウェブサイトで聴くことができます。さらに、安永餅を擬人化したマスコットキャラクターも登場しており、2009年12月時点では未命名のまま、地域の人々に愛されています。桑名市に訪れた際には、是非安永餅を試して、その歴史と味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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