かまど

かまど：歴史と文化、そして現代への継承

かまどは、煮炊きをする際に火を囲うための設備で、竈とも書き、「へっつい」や「クド」などの俗称もあります。古くから世界中で使われてきたこの調理器具は、単なる道具以上の意味を持ち、人々の生活や文化に深く根ざしてきました。

かまどの概要

かまどは、石や土などで囲いを作り、その上に鍋や釜をかける構造が基本です。この囲いによって熱が逃げるのを防ぎ、調理者は裸火の放射熱から保護されます。そのため、より高温で効率的な調理が可能になり、調理時間の短縮にもつながります。日本では、囲[[炉裏]]と並び古くから使われてきました。囲[[炉裏]]は暖房としても使われることが多いのに対し、かまどは主に調理に使われます。

地域によるかまどの違い

暖かい西日本ではかまどが日常的に使われる一方、東北や北日本では暖房を兼ねた囲[[炉裏]]が一般的でした。ただし、両者が混在する地域もあり、明確な境界線はありません。燃料としては、柴（木の枝）、薪、炭、家畜の糞などが使われ、地域によっては石炭も利用されます。また、固定式だけでなく、移動可能なかまども存在します。

かまどの歴史

かまどの原型は、地面に直接火を焚く「地床炉」や、火の周りを石で囲んだ「石囲炉」です。沖縄では、三つの石を並べただけの簡素な構造が長く使われていました。一方、朝鮮や中国、ロシア、ヨーロッパ北部などでは、かまどが暖房装置としても使われ、オンドルやペチカといった独自のシステムが発展しました。

東洋のかまど

かまどの構造は地域によって異なり、調理側と焚口側が一致するタイプや、直交、平行に分離するタイプがあります。中国では、新石器時代から竈（かまど）が使われ、地竈や壁竈などがありました。日本では、古墳時代に朝鮮半島から伝来したと考えられています。

日本のかまど

日本では、関西で「へっつい」、京都で「おくどさん」と呼ばれてきました。古墳時代までは地床炉が使われていましたが、5世紀頃からカマドが普及し始めました。当初は移動式の竈形土器が使われましたが、次第に竪穴建物内に作り付けられるようになりました。この変化は、調理効率を大幅に向上させ、当時の食文化に大きな影響を与えました。しかし、東日本では、囲[[炉裏]]が再度主流となり、かまどの使用は一時的に衰退しました。

かまどと信仰

かまどは、単なる調理器具ではなく、神聖なものとして扱われることもありました。かまど神信仰は5世紀頃から普及し、祭祀に用いられることもありました。また、祭りではかまどで湯を沸かし、邪気を払う儀式も行われています。

かまどと煙突

初期のカマドには煙を屋外に排出する煙道がありましたが、庶民の住居が変化するにつれて煙道は失われ、屋根裏を通して煙を排出するようになりました。これは、家屋を燻製にして腐朽やシロアリから守るためでした。煙突が復活したのは、明治以降に西洋文明が導入されてからです。

かまどの構造

かまどの基本的な構造は、火を囲む囲いがあり、上部に鍋や釜をかける穴があります。燃料を投入する口や、灰を掻き出す口も設けられています。これらの口は、火加減を調整するためにも使われます。

現代のかまど

戦後、炊[[飯器]]やガスコンロの普及によってかまどは一般家庭から姿を消しましたが、近年、その価値が見直されています。和風飲食店では、かまどを再現して調理をアピールしたり、キャンプ場やバーベキュー場などでも利用されています。また、災害時の防災用としても、かまどが見直されています。

世界に広がる改良型かまど

日本では役割を終えたかまどですが、開発途上国では、燃料効率の良い調理器具として再び注目されています。特にアフリカでは、日本式かまどを改良したものが広まり、森林保護や生活改善に貢献しています。JICA（国際協力機構）の支援により、ケニアで生まれた「エンザロ・ジコ」は、その代表例です。

その他の地域のかまど

インドではタンドールという独特な形の窯が使われ、西洋では石窯や薪オーブンが利用されています。これらの窯は、余熱を利用した調理に適しており、パンやピザを焼くのに使われています。

かまどと文明

かまどの発達は、文明の発達にも大きく貢献したと考えられています。調理の効率化は、人口の集中や文明の発展を促しました。しかし、ガスコンロなど新たな熱源の登場により、かまどは次第にその役割を終えていきました。

まとめ

かまどは、単なる調理器具以上の意味を持つ、人々の生活や文化に深く根ざした存在です。その歴史や構造、地域ごとの多様性、そして現代における活用法を知ることは、私たちの生活や文化をより深く理解する上で重要です。

脚注

出典

参考文献

横浜市歴史博物館『古墳時代の生活革命-5世紀後半・矢崎山遺跡-』公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター、2010年6月5日。
横浜市歴史博物館『火の神・生命の神-古代のカマド信仰をさぐる-』公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター、2012年1月21日。

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