安然 (明)

安然（あんぜん）は、1324年に生まれ、1381年に没した、元末から明初にかけて活躍した官僚です。本貫は開封府祥符県にありましたが、後に潁州へと移住しました。

元末期には、左丞として萊州の守備を任じられていました。1367年12月、徐達と常遇春率いる明軍が山東に侵攻すると、安然は自ら人々を率いて明に帰順しました。この行動が認められ、1368年12月には山東参政に任命され、明朝の官僚としてのキャリアをスタートさせます。

その後、安然は中央に召還され、1369年には工部尚書という要職に就任しました。工部尚書は、土木工事や建築などを担当する重要な役職であり、安然の行政能力が高く評価されていたことが窺えます。1372年には、地方官として河南参政に転任しました。1375年には、黄河が開封の太黄寺堤で決壊するという未曽有の災害が発生しましたが、安然は民夫3万人を徴発し、迅速な復旧作業を指揮しました。この功績により、安然は民衆の信頼を大いに得ました。

1376年には、浙江布政使として赴任します。この役職は、地方の行政を統括する重要な役割であり、安然の能力が広範囲にわたって発揮されたことを示しています。1379年9月には、再び中央に召還され、御史台右大夫に任命されました。御史台は、官僚の不正を監視する役所であり、安然の清廉な人柄が評価されたのでしょう。さらに、1380年1月には御史台左中丞へと昇進しました。しかし、同年5月には事件に連座し、免官処分を受けてしまいます。この事件の詳細は不明ですが、安然にとって大きな挫折であったことは間違いありません。

1381年1月には、安然は再び南京に召還され、四輔官という役職に任命されました。四輔官は、皇帝の相談役として、政治の中枢で重要な役割を担います。しかし、そのわずか8ヶ月後の同年8月、安然は58歳でこの世を去りました。

安然は、元末から明初という激動の時代を生き抜き、地方官から中央官僚まで幅広い役職を歴任した人物です。治水事業にも貢献し、民政にも手腕を発揮しました。その生涯は、激動の時代を背景に、官僚としての責任を全うしようとした一人の男の姿を映し出しています。

参考文献
『明史』巻137 列伝第25

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