徐達

徐達（じょ たつ）は、14世紀に活躍した明朝初期の武将です。字は天徳といい、農民出身ながら、卓越した軍事的手腕と人望で、明朝の建国に大きく貢献しました。朱元璋とは古くからの親友であり、彼の旗揚げ当初からその側近として活躍しました。

徐達は、紅巾軍に参加した朱元璋に従い、数々の戦でその才能を発揮します。1364年に朱元璋が呉王となると、その功績を認められ、大将軍・左相国に任命されました。その後も、軍閥の張士誠との戦いや、山東地方の平定で功績を挙げ、征虜大将軍へと昇進しました。

1368年、朱元璋が明を建国すると、徐達は北伐軍を率いて、中国の統一を回復する重要な役割を担います。河南で元軍を破り、首都大都を占領することで、モンゴル勢力を中国から駆逐するという大功績を挙げました。この功績により、徐達は明の太祖となった朱元璋から「創業第一の功臣」と賞賛され、右丞相、魏公という高い地位に任命されました。

しかし、その後の徐達は、皇帝となった朱元璋から次第に疎まれるようになっていきます。徐達自身は、軍紀に厳しく冷静沈着で、驕ることがほとんどなかったため、軍内からの人望は非常に高かったとされています。それにも関わらず、朱元璋は徐達の功績と人望を恐れ、徐々に疑心暗鬼になっていったのです。

徐達は54歳で病没しますが、その死には毒殺説も存在します。一説によれば、徐達が病床に伏していた時、朱元璋が見舞いとして送った蒸したガチョウが、腫れ物には厳禁の食べ物であったため、遠回しに死を宣告されたと解釈した徐達は、泣きながらガチョウを食べ、数日後に亡くなったと伝えられています。この逸話は、朱元璋の功臣に対する猜疑心と、徐達の悲劇的な最期を象徴する出来事として語り継がれています。

徐達の死後、子の徐輝祖が魏公を継ぎましたが、靖難の変で建文帝側についたため、乱後に蟄居を命じられ、不遇のうちに没しました。徐達の邸宅は、現在の南京に「瞻園・太平天国歴史博物館」として現存しています。これは、彼の功績と、明朝の歴史を今に伝える貴重な遺産です。

徐達は、卓越した軍事力と人望で明朝建国を支えた名将であり、その生涯は、明朝初期の歴史を語る上で欠かせない重要な人物と言えるでしょう。彼の悲劇的な最期は、皇帝の猜疑心がもたらす歴史の暗部を映し出し、後世に深い教訓を与えています。

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