安田善五郎

安田善五郎

安田善五郎（やすだ ぜんごろう、1886年6月26日 - 1963年1月10日）は、日本の実業家であり、安田財閥の中核を担った人物です。安田銀行頭取、京浜電気鉄道社長、安田生命保険社長、大垣共立銀行頭取、四国銀行頭取、肥後銀行頭取など、数々の要職を歴任し、日本の経済発展に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の経歴

安田善五郎は、安田財閥の創始者である安田善次郎の三男として生まれました。幼名は三郎彦。福島県立安積中学校（現福島県立安積高等学校）出身。安積中学校から東京に進学した学生のために、父・善次郎の言葉「積善の家に必ず余慶あり」から名付けられた積善寮を牛込に開設し、学費の援助も行いました。この活動は、彼の社会貢献への意識を示すものと言えるでしょう。

安田銀行頭取として

1919年、安田善五郎は安田銀行の頭取に就任しました。当時、安田銀行は日本の金融業界において重要な地位を占めており、その経営を担うことは大きな責任でした。彼はその手腕を発揮し、銀行の発展に尽力しました。

京浜電気鉄道社長として

1921年には、京浜電気鉄道（現京浜急行電鉄）の社長に就任しました。鉄道事業は、当時の日本において重要なインフラであり、その発展に貢献することは社会全体の発展に繋がりました。彼は、鉄道網の拡充やサービスの向上に尽力し、沿線地域の発展にも貢献しました。

保善社理事として

1921年に父・安田善次郎が死去すると、安田善四郎、安田善衛、安田善助の後を受け、安田善雄、安田善兵衛とともに保善社の理事に就任しました。温和な兄である2代目安田善次郎とは対照的に攻撃的な性格で、安田同族の中で大きな発言力を持ち、結城豊太郎専務理事（のちに解任）と対立しました。この対立は、安田財閥内部の権力構造や経営方針の違いを浮き彫りにする出来事でした。

関東大震災とその後

1923年の関東大震災時には、弟の安田善雄一家とともに住んでいた本所区本所横網（現墨田区横網）の安田家本邸で火災に遭い、一時死を覚悟しましたが、たまたま見つけた船で難を逃れました。この経験は、彼の人生観に大きな影響を与えたかもしれません。

1926年には安田生命保険の社長に就任し、保険事業の発展にも貢献しました。

その他の役職

1935年には大垣共立銀行と四国銀行の頭取に、1936年には安田信託社長と帝国製麻社長に就任しました。同年からは安田一保善社総長の後見役も務めました。1938年には肥後銀行頭取にも就任し、幅広い分野で活躍しました。1942年には尼崎築港取締役にも名を連ねています。

太平洋戦争が始まると、1942年に安田保善社に常勤理事制を新設し、安田楠雄、安田彦次郎を常勤理事に就任させ、自身も森広蔵とともに顧問に就任しました。

戦後と晩年

戦後、安田信託社長であったため、公職追放となりましたが、1951年に追放解除されました。

1963年1月10日、安田善五郎は生涯を閉じました。その著書である『自白の記』（1951年）は、彼の思想や哲学を知る上で貴重な資料となっています。

安田善五郎は、安田財閥の一員として、日本の経済界に多大な貢献をした人物です。彼のリーダーシップと事業手腕は、多くの人々に影響を与え、その功績は今日でも高く評価されています。

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