安田城 (越中国)

安田城跡：戦国時代の遺構を今に伝える貴重な平城

富山県富山市婦中町安田に位置する安田城跡は、戦国時代末期に存在した平城の跡です。短い存続期間であったため、後世の改変がほとんど加えられておらず、当時の姿をほぼそのまま留めている全国的にも稀有な城跡として知られています。その歴史的価値から、1981年には国の史跡に指定され、現在では整備された史跡公園として一般公開されています。

城郭構造：三郭からなるコンパクトな城

安田城跡は東西約150メートル、南北約240メートル、面積約34,000平方メートルの規模を有しています。本丸、二の丸、右郭の三つの郭から構成されており、これらの名称は現在の便宜上の呼称であり、当時の名称は不明です。城の東側を流れる井田川の水を引き込み、城の周囲には水堀が巡らされていました。

城郭の構造からは、当初は二の丸と右郭の二郭のみで構成され、後に本丸が追加で築かれた可能性が示唆されています。これは、郭の軸線のずれや、本丸を取り囲む水堀の一部が右郭の形状に削られていることなどから推測されています。本丸北東隅は、井田川の堤防造成によって失われていますが、それ以外の部分は往時の遺構が良好に残されています。

特に注目すべきは本丸の土塁です。東西約90メートル、南北約80メートルのほぼ方形の本丸は、その規模に対して基底部長約14メートルという非常に幅広の土塁が四周に築かれているという特異な構造を持っています。また、本丸北東隅には櫓が設置されていた可能性も推測されています。

歴史：富山の役から廃城まで

安田城が史料上に初めて登場するのは、天正13年（1585年）の富山の役です。豊臣秀吉が富山城の佐々成政を攻めた際に、富山城攻撃の本陣であった白鳥城の支城として、大峪城とともに安田城の存在が確認できます。文献によっては、所在が未確定の安城を前身とする説もあります。

前田家の武将である岡嶋喜三郎一吉が城主となり、佐々成政の降伏後も、越中東部の新川郡が佐々領として残ったため、前田家の前線拠点として使用され続けました。天正15年（1587年）に成政が転封されると、新川郡は秀吉の直轄領となり、その後上杉領を経て前田領となりました。これにより安田城の役割は一旦終焉を迎えたと考えられます。

しかし、慶長2年（1597年）に前田利長が守山城から富山城に移ると、岡嶋一吉は片山延高と共に白鳥城に入り、その後再び安田城に戻っています。慶長4年（1599年）に前田利家死去により利長が金沢へ戻ると、岡嶋一吉もそれに従い、その後は代官の平野三郎左衛門が城主に就いたとされますが、慶長年間には廃城となったと考えられています。

江戸時代の古図「安田古城之図」（1813年頃作成）には、江戸後期においても城の姿が比較的良好に保存されていたことが示されています。しかし、近代に入ると水堀は埋められ、城跡一帯は田畑として利用されるようになり、遺構は不明瞭になっていきました。昭和40年代末には圃場整備計画により消失の危機に瀕しましたが、1977年と1978年の発掘調査で古図通りの遺構が確認されたことで、保存されることとなり、1981年2月23日に国の史跡に指定されました。

1990年から1993年にかけて整備事業が行われ、1993年5月13日には「安田城跡歴史の広場」（現在は「富山市婦中安田城跡歴史の広場」）として一般公開されました。現在、史跡公園内には土塁や水堀が復元され、資料館も併設されています。

遺構とアクセス

主要な遺構としては、曲輪、土塁、水堀などがあります。安田城跡資料館も併設されており、城の歴史や遺構に関する情報を学ぶことができます。

所在地: 富山市婦中町安田224-1
開館時間: 9:00～17:00
休館日: 月曜、祝日の翌日、年末年始
入館料金: 無料
駐車場: 50台（無料）
交通機関: JR高山本線 速星駅からタクシーで約5分、北陸自動車道 富山西ICから車で約10分

もう一度検索