富山城

富山城：浮城の異名を持つ越中地方の要害

富山城は、富山県富山市中心部に位置する、歴史深い平城です。神通川（現在の松川）の流れを巧みに利用した防御構造から「浮城」の異名を持ち、難攻不落の城として知られていました。北陸街道と飛騨街道が交わる交通の要衝という立地も、その戦略的な重要性を高めています。

中世から戦国時代：城主の変遷と城の変貌

富山城の起源は定かではありませんが、室町時代には越中守護代の椎名氏、神保氏の支配下にありました。現在の発掘調査では室町時代前期の遺構も発見されており、従来考えられていたよりも古い時期に築城された可能性が示唆されています。

戦国時代には、神保長職が越中東部への進出を目論み、天文12年頃（1543年頃）に築城を開始したとされています。しかし、その位置については諸説あり、近年までの説では現在の位置から約1キロメートル南方の小高い場所に築かれたという説もありました。しかし、発掘調査により、現在の位置にあったことがほぼ確定しました。

永禄3年（1560年）、上杉謙信の侵攻により、神保長職は富山城を放棄し、増山城に逃れました。その後、上杉氏の支配下となる時期もありましたが、天正6年（1578年）上杉謙信の死後、織田信長に味方した神保長住が富山城を奪還しました。

天正10年（1582年）には、佐々成政が富山城を掌握し、大規模な改修工事を行いました。しかし、本能寺の変後、羽柴秀吉と対立した佐々成政は、天正13年（1585年）の富山の役で降伏。秀吉は富山城を破却し、越中を離れました。

江戸時代：加賀前田家の居城として

その後、加賀藩主・前田利長が富山城を再建し、大改修を行いました。金沢城から移り住み、隠居城としましたが、慶長14年（1609年）の大火で主要な建物が焼失。高岡城に移り、富山城には家臣が城代として入りました。

寛永16年（1639年）、加賀藩から前田利次に10万石を与えて分家、富山藩が成立。当初は新たな城を築く計画でしたが、財政難のため、万治2年（1659年）に領地交換により富山城周辺の土地を自領として、富山城を居城としました。万治4年（1661年）には本格的な修復を行い、以後明治維新まで富山前田氏の居城となりました。

安政5年（1858年）の飛越地震では大きな被害を受けましたが、その後も維持・管理され続けました。

明治時代以降：廃城と公園への転換

明治4年（1871年）の廃藩置県により廃城となり、建物は払い下げられ、解体されました。その後、富山公園として整備され、県庁舎などが置かれた時期もありました。

昭和8年（1933年）、富山城址は都市計画風致地区に指定され、昭和14年（1939年）には都市計画公園として「富山城址公園」が開園しました。昭和29年（1954年）には富山産業大博覧会を記念して模擬天守が建設され、富山市郷土博物館として利用されています。

平成期には模擬天守の耐震補強工事が行われ、国の登録有形文化財に登録されました。また、千歳御殿の門などの移築、石垣の修復なども行われました。令和6年（2024年）の能登半島地震では、城址公園内に被害が発生しました。

富山城の構造と千歳御殿

富山城は、神通川を天然の要害とした梯郭式平城です。本丸、二の丸、西の丸、三の丸などからなり、周囲を水堀で囲んでいました。天守は築かれなかったとされています。

千歳御殿は、富山藩10代藩主前田利保の隠居所として、嘉永2年（1849年）に東出丸の東側に建てられた豪華な大名屋敷です。庭園も併設され、多くの町民にも親しまれていましたが、安政2年（1855年）の大火で焼失。その後再建されましたが、明治時代に解体されました。現在、正門である千歳御門が城址公園に移築されています。

「荒城の月」との関わり

「荒城の月」の作詞者・土井晩翠と作曲者・瀧廉太郎は、それぞれ富山城にゆかりがあり、この城が作品の着想源の一つになったと言われています。晩翠は東京大学大学院時代に富山城を題材に取り上げ、廉太郎は幼少期に富山城近くの小学校に通っていました。

富山城址公園

現在、富山城址は富山城址公園として整備され、富山市郷土博物館（模擬天守）、佐藤記念[[美術館]]、千歳御門などの施設があります。公園内には、親水広場、遊びの広場なども整備され、市民の憩いの場となっています。

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