安田寛一

安田 寛一：日本のハードル界を牽引した名選手

安田 寛一（やすだ ひろかず、1936年5月31日生まれ）は、日本の陸上競技史において、ハードル種目で輝かしい足跡を残した人物です。特に男子110メートルハードルにおいて、1950年代後半から1960年代前半にかけて国内を席巻し、日本陸上競技選手権大会では前人未到とも言える7度の優勝を飾りました。そのうち6回は連続優勝という圧倒的な強さを示しています。国際舞台でも活躍し、1964年に地元で開催された東京オリンピックに出場したほか、アジア競技大会では合計二つの銅メダルを獲得するなど、日本を代表するハードル選手としてその名を刻みました。

競技者としての道のり

富山県に生まれた安田氏は、明治大学に進学し、学生時代からその才能を開花させました。1957年には、陸上競技の最高峰である日本選手権において、専門種目の110メートルハードルと400メートルハードルの二冠を達成するという快挙を成し遂げます。さらに、チームの一員として出場した4×400メートルリレーでも優勝し、大学陸上界の中心的存在となりました。この年を皮切りに、得意とする110メートルハードルでは1962年まで実に6年間にわたり日本一の座を守り続け、前述の記録と合わせて通算7度の優勝を記録しました。

国際大会での活躍も目覚ましく、1958年に東京で開催されたアジア競技大会では、110メートルハードルと400メートルハードルの二種目に出場。特に110メートルハードルでは銅メダルを獲得し、日本のハードル技術の高さをアジアに示しました。また、同年、地元富山で開催された国民体育大会では、開会式で選手宣誓を務め、競技では110メートル障害で優勝。さらに、400メートル障害では当時の日本学生記録を更新する52秒9の好タイムをマークするなど、記憶に残る活躍を見せました。

大学卒業後は八幡製鉄（現・新日鐵住金）に入社し、社会人選手として競技を続けました。実業団の大会でもその実力は揺るぎなく、全日本実業団対抗陸上競技選手権大会の110メートルハードルでは、1964年までに5度の優勝を重ねました。

そして、競技人生の集大成ともいえる舞台が、1964年の東京オリンピックでした。地元開催の大舞台で、安田氏は110メートルハードルに出場。世界の強豪が集まる中で準決勝まで駒を進め、そこで日本記録を樹立する力走を見せましたが、惜しくも決勝進出はなりませんでした。しかし、自国開催のオリンピックで日本記録を更新したそのパフォーマンスは、多くの人々に感動を与えました。

競技人生のその後

現役を引退した後も、安田氏はスポーツとの関わりを持ち続けました。37歳の時には、取引先の社長の勧めでゴルフを始め、アマチュアゴルファーとしても活動しています（2007年時点では呉羽カントリークラブに所属）。

また、長年にわたり貢献してきた陸上競技への情熱は衰えることなく、特に地元富山県において、競技の普及と後進の育成に尽力しています。富山市陸上競技協会の副会長や、富山ジュニアアスリートクラブの代表などを歴任し、若いアスリートたちの指導や育成に情熱を注いできました。2000年に富山県で開催された国民体育大会では、夫人とともに最終聖火ランナーを務め、地元のスポーツイベントに深く関わりました。

安田寛一氏は、選手として日本ハードル界の歴史に名を刻み、引退後もその経験と情熱を次世代へと伝えるべく活動を続ける、日本のスポーツ界にとって重要な人物です。

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