安田景元

安田 景元（やすだ かげもと）

戦国時代、越後国において武将として活躍したのが安田景元です。彼は越後毛利安田氏の当主であり、居城は安田城でした。官途は越中守を称しています。一般的には、安田広春の養子となり、広春の娘を正室に迎えたと伝えられていますが、後述するように出自や系譜については様々な説が存在します。子には安田顕元、安田能元がおり、彼らもまた上杉家に仕えました。

出自と系譜の諸説

安田景元の詳細な出自については、実は不明な点が多く残されています。永正十二年（一五一五）閏二月に長尾為景から所領を安堵された「安田百」という人物がおり、これがまだ元服前の景元であった可能性が指摘されています。しかし、彼の本領である安田の地は、当初、玄統（法名）という人物の娘が継承したことが、天文三年（一五三四）付の長尾為景から安田景元（越中守）への書状から読み取れます。この玄統は、安田清広、あるいはその後継者である弥九郎という人物に関連する女性であったと推測されています。

こうした状況から、歴史研究家の丸島和洋氏は、従来の通説である広春の養子説に異論を唱えています。丸島氏によれば、景元は清広の庶子、あるいは有力な庶流家の出身であった可能性が高いといいます。そして、永正年間という比較的早い時期に、既に所領安堵を受けて安田氏の当主、もしくは次期当主と認識されていた景元が存在するにもかかわらず、広春がその地位に就くことは考えにくいと主張しています。このことから、丸島氏は通説の養子縁組関係を否定的に見ています（なお、丸島氏はこれと関連して、北条高広（松若丸）と安田広春との関係についても否定的見解を示しています）。

安田氏には同時代の越後において、上杉家臣である安田長秀などを輩出した大見安田氏も存在しますが、景元が属する安田氏は、これとは別の家系である毛利安田氏にあたります。

生涯の足跡

景元は越後長尾氏（後の上杉家）に仕え、その治世を支えました。特に重要な局面では、主君に従い戦っています。上条定憲を中心として長尾為景に対して大規模な反乱（上条の乱）が勃発した際、景元は長尾為景に味方し、反乱軍と激しい戦いを繰り広げました。上条の乱は長期化し、戦況は一進一退を繰り返しましたが、最終的には為景が隠居することで一旦の沈静化を見ました。

為景の隠居後も、景元は彼の嫡子である長尾晴景、そしてその跡を継いだ景虎（後の上杉謙信）の二代にわたって忠誠を尽くしました。彼の働きの中でも特筆すべきは、天文二十四年（一五五五、あるいは弘治元年）の出来事です。この年、同じく大江系毛利一族に連なる北条高広に謀反の動きがあることを察知した景元は、その情報を極めて迅速に直江景綱に伝えました。この素早い報告により、謙信側は対策を講じることができ、景元は謙信から高く評価され、賞賛を受けることとなりました。

安田景元は、このように越後長尾氏、そして上杉家三代に仕え、出自に諸説ありながらも、特に上条の乱における従軍や、重要な局面での情報伝達など、武将として一定の役割を果たした人物であったと言えます。

関連項目

毛利氏
上杉謙信
長尾為景
上条の乱
北条高広
安田城
* 直江景綱

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