安積国造神社

安積国造神社（あさかくにつこじんじゃ）は、福島県郡山市の中心部に位置する歴史深い神社です。旧社格は県社でした。

由緒と歴史

神社の起源は、成務天皇五年（西暦135年頃と推定される）に遡ります。この年、比止禰命（ひとねのみこと）が初代安積国造（あさかのくにのみやつこ）に任命され、この地に安積国を建国しました。その際に、国家安泰と地域の発展を願って神社を創建し、五穀豊穣や産業の神とされる和久産巣日神（わくむすびのかみ）と、生活の恵みをもたらす天湯津彦命（あまのゆつひこのみこと）をお祀りしたことに始まります。

その後、建国の祖である比止禰命の偉業を称え、その御霊も合祀されました。また、平安時代に坂上田村麻呂が東北地方を平定する際、この地で戦勝を祈願したと伝えられており、その際に武勇の神である八幡大神（はちまんだいじん／誉田別命：ほんだわけのみこと）が合祀され、以降「八幡宮」とも称されるようになりました。

さらに時代が下り、平安時代後期には、源頼義（みなもとのよりよし）・義家（よしいえ）父子が奥州へ向かう途中、当社に立ち寄り戦勝を祈願したという記録も残されており、武家の崇敬も集めました。

現在、主な祭神としては、創建当初から祀られる和久産巣日神、天湯津彦命に加え、比止禰命、誉田別命（八幡大神）、そして稲作や食物の神である倉稲魂命（うかのみたまのみこと）の五柱をお祀りしています。

境内と施設

広々とした境内には、様々な建築物や記念碑が点在しています。

本殿: 現在の建物は1926年（大正15年）に再建された総檜造りで、高さは約12メートルあります。
拝殿: 1810年（文化7年）に再建されたもので、郡山市内では数少ない江戸時代に建てられた貴重な建築物として現存しています。
社務所・授与所: お守りやお札を授与するほか、境内に設置されている安積艮斎記念館の見学申し込みもこちらで行います。
安積国造神社会館: 神社の敷地内にあり、4階には後述する安積艮斎記念館が設けられています。
安積幼稚園: 第62代宮司の安藤貞重氏らが1948年（昭和23年）に創立した幼稚園が境内にあります。
郡山八幡祠碑: 1810年（文化7年）の拝殿再建竣工を記念して1817年に建立された石碑で、江戸時代の儒学者である安積艮斎が撰文し、当時の松平定常公の銘が入っています。
安積山の歌石碑: 『万葉集』に収められたこの地域ゆかりの歌「安積山の歌」を刻んだ石碑が、昭和通り側の表参道脇に立てられています。
郡山市耕地整理記念塔: 境内の南側に位置するアール・デコ調の塔で、1926年（大正15年）に竣工しました。旧郡山市役所などを手掛けた宮田荘七郎氏の設計によるものです。

摂末社

本殿の周囲には、いくつかの摂末社が鎮座しています。

皇大神宮: 天照大神（あまてらすおおみかみ）をお祀りしており、伊勢神宮から拝領した鳥居とともに本殿の右側に位置します。
安積天満宮: 学問の神として知られる菅原道真（すがわらのみちざね）公とともに、当地ゆかりの儒学者である安積艮斎（あさかごんさい）も学問の神として祀られています。本殿の左側にあります。
白王稲荷神社: この地の地主神であり、農業・食物・商売繁盛の神として信仰されています。江戸時代に高遠（現在の長野県伊那市）の商家が奉納したとされる「高遠の透かし灯籠」などが奉納されています。
郡山市招魂社: 靖国神社（東京都千代田区）から分霊され、郡山市出身の戦没者や出征兵士などの御霊をお祀りしています。

安積艮斎との深い関わり

江戸時代後期を代表する儒学者であり、小栗忠順や吉田松陰らの師としても知られる安積艮斎は、当社の第55代宮司であった安藤親重の三男として生まれました。この由緒から、境内には安積艮斎の銅像が建てられ、安積国造神社会館内には安積艮斎記念館が開設されています。

記念館には、艮斎ゆかりの品々や資料が収蔵・展示されており、特に「安積艮齋関係資料」は、安積艮斎門人帳（5帳）や著書等（8点19冊）などからなり、その業績や交流を知る上で貴重であることから、2009年（平成21年）4月3日に福島県指定重要文化財（歴史資料）に指定されています。

参道

なかまち夢通りから芭蕉通りを経て昭和通りと交差するあたりから、神社に至る約200メートルの区間は「表参道」と呼ばれています。この参道は石畳で舗装され、沿道には地元の土産物店や古くからの飲食店などが立ち並び、賑わいをみせています。かつては、この表参道を境にして南側を上町、北側を下町と呼び分けていた歴史もあります。

また、さくら通り側にある北参道の社号標（神社の名前が記された柱）には、幕末の幕臣で書家としても知られる勝海舟の揮毫による文字が刻まれています。

主な祭事

安積国造神社の年間を通じての最も重要な祭事は、毎年秋に開催される例大祭です。この祭礼は、郡山駅周辺を含む中心市街地を、趣向を凝らした数多くの山車（だし）や勇壮な神輿（みこし）が練り歩く大規模なもので、郡山地方の秋を代表する風物詩として広く定着し、多くの市民や観光客で賑わいます。

この他、節分（2月3日頃）や7月31日には「大祓（おおはらえ）」が行われます。これは、半年間に身についた罪や穢れ（けがれ）を形代（かたしろ：人の形をした紙など）に移して祓い清める神事です。

交通アクセス

鉄道：JR郡山駅から徒歩約8分
バス：福島交通バス清水台バス停下車（郡山駅からの運賃100円均一区間内）

安積国造神社は、郡山の街の発展を見守り続けてきた歴史ある神社として、地域の人々にとって心の拠り所となっています。

もう一度検索