安積艮斎

安積艮斎（あさか ごんさい）

安積艮斎は、江戸時代末期に活躍した著名な儒学者です。 寛政3年（1791年）に陸奥国（現在の福島県郡山市）で生まれ、幼名を重信といいました。16歳で結婚しますが、翌年、学問を志して江戸へ出府。佐藤一斎や林述斎に師事し、朱子学を深く学びました。

私塾「見山楼」の開設

文化11年（1814年）、24歳の時に神田駿河台に私塾「見山楼」を開設。この塾は旗本小栗家の屋敷内にあり、小栗忠順もここで学びました。見山楼には、吉田松陰、高杉晋作、岩崎弥太郎、小栗忠順、栗本鋤雲、清河八郎など、幕末から明治にかけて活躍した多くの人物が集まりました。その門下生は2000人を超えると言われ、日本の近代化に貢献する人材を多数輩出しました。

学問と思想

安積艮斎は、単なる朱子学者にとどまらず、陽明学など、他の学問や思想も積極的に取り入れました。また、海外事情にも明るく、海防論を唱えるなど、時代の変化を捉え、その動向に合わせた柔軟な思考を持っていました。

天保3年（1832年）に『艮斎文略』を出版したことで、その名声は高まりました。その後、二本松藩の「出入儒」となり、藩政にも関与。天保14年（1843年）には二本松藩校敬学館の教授を務めました。嘉永3年（1850年）には昌平黌教授に就任し、ペリー来航時のアメリカ国書翻訳や、ロシア国書の返書起草など、幕府の外交にも深く関わりました。また、幕府へ外交意見書である『盪蛮彙議』を提出するなど、その見識は高く評価されました。

晩年と死後

万延元年（1860年）、70歳で亡くなる直前まで講義を行っていたと伝えられています。その学識と人格は多くの人々から尊敬され、没後もその影響力は衰えることはありませんでした。墓は東京都葛飾区の妙源寺にあります。

大正4年（1915年）には、その功績を称えられ、従四位を追贈されました。

安積艮斎記念館と関連商品

安積国造神社の神社会館には、安積艮斎記念館が設置されており、将軍より拝領した帷子や、毛利侯より拝領した硯などが展示されています。また、境内には、艮斎誕生地の碑も建てられています。

安積艮斎が江戸へ向かう際に、懐に抱えていた炒り豆で空腹をしのいだという逸話から、柏屋からは「ごんさい豆」という菓子が商品化されています。

主な著書

『艮斎文略』
『遊豆紀勝』
『洋外紀略』
『史論』

関連人物

安積艮斎は、多くの門人を育てただけでなく、楫取素彦、宇津木翼、江村彦之進、小笠原東陽、那珂通高、本城清、間崎哲馬、矢島立軒、小栗忠高、谷干城など、多くの人物と交流を持ちました。

安積艮斎は、激動の時代に、学問を通して多くの人材を育て、日本の近代化に大きく貢献した人物と言えるでしょう。

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