安藤政次郎

安藤政次郎について

安藤政次郎（あんどう まさじろう、1855年1月10日 - 1930年7月18日）は、明治時代の著名な新聞販売業者であり、後に養豚業や動物園の創設者としても知られています。彼の生涯は、地方の小さな町から始まり、独自のビジネススタイルで多くの人々に影響を与えることとなりました。

生い立ちと新聞販売業

政次郎は三河国渥美郡吉田紺屋町（現在の豊橋市大手町）に生まれました。彼は父親の経営する紺屋の長男として育ち、明治10年（1877年）に故郷を離れて静岡で新聞販売業を開始しました。その後、1880年には横浜に移り、そこでの販売活動を続けました。

横浜での彼の販売スタイルは特に印象的でした。政次郎は、黒塗りの挟み箱に新聞を入れ、肩に担ぎながら鈴を鳴らして街を歩きました。この格好から、彼は「新聞小政」と呼ばれ、瞬く間に評判が広まりました。その姿は絵葉書としても販売され、東京の舞台でも彼の面影を模した役柄が登場するなど、彼の知名度は飛躍的に上がりました。

動物園の設立

1887年に故郷に戻った後、政次郎は1888年に結婚し、渥美郡花田村で養豚業を始めました。この業務は、豊橋に駐留していた歩兵第18連隊に豚肉を供給する形で発展しました。動物愛好家でもあった政次郎は、養豚場の一角で猿や鳥を飼い始め、近所の人々が訪れるようになり、これが後の動物園の基礎となりました。

1899年に彼は「安藤動物園」を設立し、個人的な経営の動物園として多くの人々を魅了しました。ユニークな宣伝方法として、うさぎの着ぐるみを着て呼び込みを行った彼は、駅前の好立地も相まって人気を博しました。

1912年には、道路の拡張に伴い動物園を移転し、敷地を約750坪に拡大。同園では50種以上の動物が飼育され、地域の子どもたちの遠足先としても重宝されました。さらに、移動動物園も行われ、多くの人々に楽しみを提供しました。

晩年と遺贈

しかしながら、晩年には経営上の困難に直面した政次郎は、昭和5年（1930年）に病に倒れ、亡くなる際に動物園を市に寄贈する意向を遺しました。彼の遺志を受け継ぎ、1931年には安藤動物園が豊橋市に寄贈され、自治体運営の「豊橋市立動物園」となりました。

現在、その名残は豊橋総合動植物公園の一部に残されており、「安藤政次郎翁追憶之碑」が建立されています。この碑は、彼の貢献を偲ぶためのものです。

人物像

生前の政次郎に関しては、彼が積極的に人命救助や火災防止活動に取り組んだことが知られています。この実績により、愛知県知事から賞を受けたこともあります。また、日清戦争以降には「清正」という別名で呼ばれることもありました。これは、彼のいわゆる勇壮な行動を称えたものです。

政次郎の生涯は、地域社会に多大な影響を与えただけでなく、多くの人々に愛され続けています。彼のユニークな経歴と功績は、今も豊橋の歴史に刻まれています。

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