安部憲幸

安部憲幸（あべ のりゆき）

安部憲幸は、1945年5月8日に生まれ、2017年4月6日に逝去した、島根県安来市出身のフリーアナウンサーです。彼は、元朝日放送（ABC）のアナウンサーであり、その独特な実況スタイルと親しみやすい人柄で、多くの人々に愛されました。

愛称「アベロク」

安部憲幸の愛称は「アベロク」として知られていました。この愛称は、彼が担当していたラジオ番組のタイトルにも使用されるほどでした。「アベロク」の由来には、ABCテレビのチャンネル番号である6チャンネルから来ているという説や、大学に6年間通ったからという説があります。また、ABCの後輩アナウンサーである阿部成寿との区別のためにも使われていました。

ABC入社とアナウンサーとしての活躍

國學院大學文学部日本文学科を卒業後、1970年にアナウンサーとして朝日放送に入社しました。同期には金木賢一がいました。ABCでは、プロ野球中継の実況やラジオのワイド番組のパーソナリティなどを担当し、特にプロ野球中継では、少年時代からファンであった近鉄バファローズ戦を中心に数多くの実況を担当しました。

1971年9月9日には、日生球場での対西鉄ライオンズ戦で、近鉄の鈴木啓示が無安打無得点試合を達成した瞬間を実況しました。この試合は当初中継予定がなく、安部自身も練習のつもりで放送席に座っていましたが、大記録達成の可能性が生じたため、急遽ラジオで実況を担当することになったというエピソードがあります。

「10.19」と「This is プロ野球!」

1988年10月19日、川崎球場でのロッテ・オリオンズとのダブルヘッダー（「10.19」）第2試合のテレビ中継で実況を担当しました。9回表2死2塁の場面で、近鉄の新井宏昌が放った三塁線を襲うゴロをロッテの水上善雄が好捕した際、「止める!水上！This is プロ野球!まさに、打ちも打ったり新井!よく止めた水上!白熱のゲームが、好プレーを演出!」と絶叫しました。このフレーズは、近鉄の逆転優勝の可能性が消滅したことと相まって、全国的に知られるようになりました。

実況スタイルとゲーム実況への挑戦

安部憲幸は、プロ野球中継の実況で「ビシッ!」「ガツーン!」「ドカーン!」といった擬音を多用しました。1994年には、テレビゲーム『実況パワフルプロ野球'94』で、アナウンサーとして初めてスポーツゲームの実況に挑戦し、以降も同シリーズで実況を担当しました。

阪神・淡路大震災での報道

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、ABC本社で宿直勤務中に被災し、テレビ向けの取材や中継リポートを急遽担当しました。

ラジオパーソナリティとしての活躍

若手時代には『ABCヤングリクエスト』のパーソナリティを志望しましたが、実現しませんでした。しかし、深夜帯以外の時間帯では、『空からこんにちは～トヨタ・ウィークエンド・パトロール～』などのラジオ番組でパーソナリティを担当し、1990年代後半からは、自身の愛称を冠した生ワイド番組（『アベロクのOH!まっぴるま』『アベロクのどんまいサンデー』など）を担当しました。

定年後と晩年

2005年にABCを定年退職した後も、嘱託社員として『アベロクのどんまいサンデー』に出演し、2006年3月31日にABCを退職しました。退職後もフリーアナウンサーとしてABCのラジオ番組に出演し、講演活動なども行いました。

2007年に病に倒れてからは療養生活を送っていましたが、2017年4月6日に胃がんで死去しました。71歳でした。彼の死後も、生前に収録された実況音源がゲームに採用されたり、彼の実況を盛り込んだドキュメンタリー番組が制作されたりするなど、その功績は長く語り継がれています。

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