官職秘抄

『官職秘抄』の概要

『官職秘抄』（かんしょくひしょう）は、鎌倉時代前期の正治2年（1200年）頃に、平基親によって著述された有職故実に関する解説書です。本書は全2巻から成り立ち、主に官職の名称やその変遷、また官職に就く際の必要な家格や経歴について詳細に論じています。特に院政期の官職制度に関する知識は豊富であり、当時の政治的背景を反映した内容となっています。

この作品は、官職についての解説を含む現存する最も古い資料であり、平基親が仁和寺門跡の守覚法親王からの質問に答える形で書かれたとされています。基親は従三位兵部卿としての地位を持ち、彼自身の経験や知見を基に、当時の官職についての理解を深める手助けをしたものと考えられます。

主要な内容

『官職秘抄』は、官職の名称の変遷や、それに関連した制度的な側面を掘り下げています。書中では、官職がどのような基準で決められ、またその官職に就くためにはどのような家格や経歴が求められるのかが明確に記されています。特に重視されているのは、官職就任にあたっては能力や才覚よりも家格が重要視されるという見解です。この点は、後の南北朝時代の北畠親房の著作「職原抄」といった文献にも影響を及ぼし、共有する思想が見られます。

写本と翻刻

『官職秘抄』の写本は室町時代末期に書写されたものが存在しており、元弘元年（1331年）や大永5年（1525年）の年次が記された奥書が残されています。これらの写本は、官職に関する研究において重要な資料とされています。また、塙保己一編の『羣書類従 第5輯』では、1997年に「官職秘鈔」として上巻および下巻が収録されています。

影響と関連文献

『官職秘抄』は、その後の日本の官職制度に関する研究や理解に大きな影響を与えました。南北朝時代の北畠親房や、他の関連書籍である「百寮訓要抄」「大日本史の職官志」「職官志」などとも深い関連性があります。これらの文献でも、官職に関する考察や解説が行われており、基親の見解が後に続く研究にどのように受け継がれていったのかを知る手がかりとなります。

結論として、『官職秘抄』は日本の官職制度の理解のための重要な一冊であり、その内容は多くの後続文献に影響を与え続けています。

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