大日本史

大日本史 (だいにほんし)

『大日本史』は、江戸時代に水戸徳川家の当主、徳川光圀によって編纂された日本の重要な歴史書です。この作品は神武天皇から後小松天皇まで、約1300年の歴史を対象にしており、編纂には約261年の歳月を要しました。光圀の死後も水戸藩の推進によってこの大作は続けられ、明治時代に完成を見ました。

編纂の背景

光圀は水戸徳川家の世子として、若い頃には非行が目立ちましたが、1645年に『史記』の伯夷伝を読んで感銘を受けて以来、学問に励むようになります。彼は1657年に明暦の大火で藩邸が焼失した後、駒込別邸に史局を設立し、歴史編纂の取り組みを始めました。この時期は日本の史書が主に編年体であった中で、紀伝体の形式を採用することには多くの抵抗がありましたが、光圀はその重要性を理解していました。

主要な構成

『大日本史』は、全397巻から成り、本紀73巻、列伝170巻、志154巻という構成です。編纂に参加した学者たちは「水戸学派」と呼ばれ、その活動は光圀の影響を強く受けました。1715年に藩主徳川綱條により正式なタイトルが決定され、『大日本史』として知られるようになりました。これ以前には『本朝史記』や『国史』などと呼ばれることもありました。

光圀は「彰考館」と名付けた史館を運営し、優れた歴史資料の収集と整理に努めました。特に南朝関連の資料に重点を置き、明朝からの亡命者である朱舜水を招いて南北朝時代の正統性についての意見を学ぶなど、彼は歴史の正当性にも配慮しました。

特徴と影響

『大日本史』は大きく分けて三つの特徴があります。
1. 神功皇后を列伝に加えたこと。
2. 大友皇子を帝紀に含めたこと。
3. 南朝正統論の唱え。

これにより、作品全体は水戸学の尊皇的な思想を反映しており、幕末の思想に大きな影響を与えました。歴代天皇の扱いもこの作品の影響下で再編され、近代の歴史学においては批判的な見解もあるものの、西田幾多郎をはじめとする哲学者により、思想書としての評価も確立されています。

内容の体系

『大日本史』の本紀は、古代から中世にかけての天皇の治世を詳述し、列伝では後妃や皇子皇女、重臣の事績が記されます。全体として非常に詳細かつ網羅的な内容となっており、特に南朝の歴史的意義やその正統性についての記述が見受けられます。

作品の継承

光圀の死後、安積澹泊が編纂を継続し、江戸時代後期にはさらなる刊行作業が行われました。この作品は明治期にも多くの校訂を受けながら、今日まで伝えられています。草稿は多くが徳川ミュージアムに所蔵されており、歴史的価値は今なお色あせることがありません。

『大日本史』は日本の歴史研究における金字塔といえる存在で、その学問的貢献は歴史教育や研究にとって不可欠なものなのです。

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